2014 Fiscal Year Research-status Report
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25420749
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
高羽 洋充 工学院大学, 工学部, 教授 (80302769)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リチウム空気電池 / 第一原理計算 / シミュレーション / マルチスケール / 劣化 / 電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム空気電池テクノロジーは高容量、高エネルギー密度の電池として近年大きな注目を受けている。しかし実用化には様々な課題が残っている。これまでの研究ではカーボン上への析出物形態とその導電性への影響が解析されてきた。しかしながら、カーボン表面での原子レベルでの析出形態は未だ解明されていない。そこで本研究では、まず、主な放電析出物であるLi2O2のカソード極での原子レベルでの析出形態と、その導電性についての解析を第一原理分子動力学法を用いて行った。今年度は、昨年度までに実施された第一原理分子動力学法シミュレーションにより、種々のカーボン表面へのLi2O2の析出状態をモデル化し、バトラー・ボルマー式に組み込むことに成功した。モデル化では、カーボン表面の末端部分が、析出物と強く相互作用することに注目し、末端構造を中心としてLi2O2クラスターが成長していくことにより、反応活性表面積が減少する解析式を構築し、充放電特性への影響を定量化した。このモデルを組み込んだバトラー・ボルマー式から分極曲線を求め、既報の実測データの再現性を検証した。その結果、これまでの報告では再現できていなかった、メソ細孔とミクロ細孔が共存する電極カーボンを用いたリチウム空気電池で観測されている結果を、良好に再現できることを確認した。これは、開発したモデルの妥当性を支持するものである。さらに、電位を考慮した析出のダイナミクス計算方法の開発を行った。このシミュレーション手法は、電位の影響を系の電荷を調整することで簡便的に考察できる新しい計算方法である。開発した計算方法を、析出のダイナミクスへの電位の影響解明に適用し、有効性を確認するとともに、充放電電位を本シミュレーション計算から定量的に推算できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
析出モデルをバトラーボルマー式に組み込むことに成功し、実測データを予想以上に良好に再現することができたため。これらにより、当初のLi2O2析出による電池劣化のシミュレーション基盤はほぼ達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、電解質の影響についても検討することで、マルチスケール計算化学による空気電池設計基盤の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に、所属機関異動により予算を計画通りに執行しなかった分が、順に繰り越されている。初年度で予定していたシミュレーションコンピュータの一部購入を本年度執行したが、まだ残額があまった。これは、研究の進行状況をみて、予定していたシミュレーションコンピュータを一部だけ購入したためである。来年度に繰り越すことで、より高性能なコンピュータを安く購入でき、その方が研究目標達成のためには得策だと判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シミュレーション用コンピュータを購入する予定である。また着実な成果が出ているため、成果を国内外で積極的に発表していくことを考えている。そのための旅費増額にも使用する予定である。
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