2015 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属水素物の電子状態に着目した水素吸蔵特性の解明
Project/Area Number |
25420756
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石松 直樹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70343291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属水素化物 / X線吸収分光法 / パラジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
水素化特性においてパラジウム(Pd)は,金属としての性質がよく似る他の遷移金属元素(例えばRhやNi)とは異なり,唯一,常温常圧下で水素化する元素である.本研究では,「なぜPdだけが常温常圧下で水素化できるのか?」の疑問について電子状態の観点からその解明を目指した. Pdは周期表で隣接するRhやAgなどと合金化すると,水素化に必要な圧力(PH)が増減する.本研究ではX線吸収分光法(XAS)の元素選択性を利用して,水素化特性の組成依存性をPd基合金を構成する個々の元素(Pd,Ag,Rh,Ruなど)の電子状態から調べた. 平成27年度はこれまでのL3吸収端のデータに加えてL2吸収端のXASの測定を行った.さらに理論計算とのXASとの比較を行った.Pd基合金中において,d軌道が閉殻でないRhやRuの4d遷移金属はPdと同様に水素と結合性軌道を形成している.一方,d電子が閉殻のAgは,水素との結合性軌道を形成しないことが分かった.このため,RhやRuを混ぜた時のPHの増加は,RhまたはRuと水素との結合に必要なエネルギーがPdに比べて大きいことが原因と結論した.一方,Agの場合のPHの低下は,合金化による格子定数の増加が一因と考えている.このようにPd基合金の水素化特性は,合金化によって平均化された電子状態ではなく,構成元素個々の電子状態で説明できることを示した.Pdの優れた水素化特性はPd固有の電子状態に起因するものであり,水素化特性は平均のd電子数で制御できるものではないと考えられる.現在,この結果を論文にまとめている. さらに,平成27年度は金属水素化物の一環として,希土類-遷移金属のラーベス相の水素化過程と水素化によって磁気相へリエントラントする磁気相図をX線吸収分光で議論した研究をまとめ,これを論文化した.
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