2014 Fiscal Year Research-status Report
巨大ひずみ加工による結晶粒超微細化強化と析出強化の同時利用の実現
Project/Area Number |
25420775
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
渡邊 千尋 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (60345600)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 巨大ひずみ加工 / 高圧ねじり加工 / 析出硬化型銅合金 / 結晶粒微細化 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二年度に当たる平成26年度は,析出強化型のCu-Be系合金とCu-Ti合金へ,高圧ねじり(HPT)加工を行い,その後,時効熱処理を行うまでの室温保持(自然時効)時間を変化させ,析出挙動の調査を行った.巨大ひずみ(SPD)加工によって作製されたバルクナノメタルには,高密度の格子欠陥が含まれる.その中でも,過飽和に導入された空孔は,室温においても急激にその濃度が低下し,平衡濃度近くまで減少することが知られている.このことから,析出硬化型合金において,SPD加工後から時効熱処理を行うまでの時間は,析出挙動へのパラメータとして考えることが出来る.Cu-Be系合金は,溶体化処理後の時効熱処理により,G.P.ゾーンが核形成し,その後,中間相を経て安定γ相へと変化する.一方で,Cu-Ti合金では,スピノーダル分解によりβ’相が形成し,その後安定β相へと変化する. Cu-Be系合金では,HPT加工後の自然時効時間の増加とともに,続く人工時効におけるピーク硬さが減少し,またピーク硬さに至るまでの時間が短くなった.すなわち,HPT加工後に自然時効を施すと,続く人工時効時に負の効果が現れた.一方で,Cu-Ti合金では,自然時効による人工時効時のピーク硬さと,そこまでの到達時間の変化はほとんど見られず,自然時効の影響はほとんど現れなかった.この結果は,HPT加工により導入された格子欠陥の自然時効中の消滅が影響したためと示唆された.Cu-Be合金では,自然時効時間が増加するに従い,空孔濃度が低下し,強化相であるG.P.ゾーンの核形成頻度が低下したと理解される.一方,Cu-Ti合金は析出物の核形成を必要としないスピノーダル分解によって析出反応が進行するため,人工時効前の空孔濃度によって,析出過程が変化しなかったと理解できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題では,巨大ひずみ高による結晶粒超微細化と,加工後の熱処理による析出強化を重畳させ,強度に優れかつ延性を保持した合金を創製するための指針を確立することを目的としている.具体的には,析出硬化型の銅合金を用いて,1)巨大ひずみ加工条件(温度,速度,ひずみ量),2)強化相の析出挙動(中間相の有無,核形成またはスピノーダル分解),3)強化相の体積分率の3つに注目し,これらを系統的に変化させ,結晶粒微細化強化と析出強化を同時に実現するための原理原則を探る. 第一年度の平成25年には,上記の目的のうち1)と2)について,基礎的な知見をえた.すなわち,加工温度の変化により,続く時効時の析出挙動が異なり,これは加工中の溶質原子のクラスタリングや転位上への偏析による事を示した.第二年度に当たる平成26年度には,強化相析出物の形成挙動の相違により,加工中に導入された格子欠陥密度の変化に対して,その析出挙動が敏感に変化する事を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成27年度では,巨大ひずみ加工後の自然時効中の格子欠陥密度の変化をより詳細に検討するために,これまでに行ってきた比抵抗測定に加えて,示差熱分析とX線分析を行う.比抵抗測定と示差熱分析では,空孔と転位の密度変化を捉えることができ,X線分析では転位密度の変化のみに敏感である.従って,これらの手法を併用することで,空孔と転位の密度変化を分離することが可能となる. さらに,Cu-Ti合金のTi濃度による析出挙動の変化についても調査を行う.Cu-Ti合金は,そのTi濃度によって,析出物の形成機構が核形成からスピノーダル分解へと変化する.従って,Ti濃度変化によって,自然時効に続く人工時効時の析出挙動が異なる事が予想される. 平成25~26年度に得られた結果と,平成27年度の結果を併せて,本申請研究の総括を行う.
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Causes of Carryover |
昨年度参加を計画していた国際会議(TMS annual Meeting,米国)に,学内業務の関係で出席することが出来なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度,別の国際会議(Solid-Solid Phase Transformation in inorganic materials,カナダ,6/28-7/3)に参加し,研究発表を行う予定である.
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Research Products
(5 results)