2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー衝撃法による高密度格子欠陥導入・高密度結晶構造残存の機構解明とその応用
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25420778
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐野 智一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェムト秒レーザー / 衝撃圧縮 / レーザー衝撃法 / 準安定構造 / 格子欠陥 / ピーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、これまでに新しい塑性加工プロセスとして“レーザー衝撃法”を提唱し、この手法を用いて固体内部に高密度の格子欠陥を導入し、また高密度結晶構造を残存させることに成功している。ところがこれらの機構は解明されておらず、またマクロな材料特性向上には至っていない。そこで本研究では、レーザーパラメーターと物性値の観点からこれらの現象を定量的に理解し、機構解明することによって、高密度格子欠陥導入過程と高密度結晶構造残存過程を同時に記述するモデルを構築することを目的とする。さらにこのモデルを用いて、これらの現象によるマクロな材料特性向上として高硬度化および圧縮残留応力付与の最適条件を見出し、本手法をプラズマ閉じ込め媒質を用いない新しいレーザーピーニング手法として確立させる。 本年度は、高密度格子欠陥導入現象を定量的に理解することとその機構解明を目的として、純鉄に対してフェムト秒レーザーの条件(パルスエネルギー、ショット数)を変化させて照射し、照射後の金属組織変化および力学的特性変化を調べた。その結果、フェムト秒レーザーパルスのショット数が硬化深さおよび硬化率に影響を及ぼすことがわかった。また、表層約3um以内の領域には高密度転位を有するマイクロバンドが存在し、その領域は硬化領域に一致することがわかった。これらのことから、表層硬化の要因は、フェムト秒レーザー駆動衝撃波の繰り返し負荷に起因する高密度な転位進展構造の形成であると考えられる。さらに、衝撃波の繰り返し負荷に伴い局所的に転位堆積部が形成され転位の易動度に差異が生じ、これが転位堆積を助長することによってマイクロバンドが形成されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、本年度は高密度格子欠陥導入および高密度結晶構造残存過程のモデル構築に関する研究項目を実施する予定であった。本実施内容は当初の予定通り遂行することが出来た。さらに、次年度着手する予定だったプラズマ閉じ込め媒質を用いない新しいレーザーピーニング手法確立に関する研究項目を開始することが出来た。その結果、これらの相乗効果によって研究計画全体が予定以上に進み、多くの成果を得ることが出来た。具体的には、今年度だけで英文論文誌に3本、和文論文誌に1本の論文が掲載された。このように、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
既に実施した高密度格子欠陥導入および高密度結晶構造残存現象の定量的理解とその機構解明と、高密度格子欠陥導入および高密度結晶構造残存過程のモデル構築に関する研究のさらなる深掘りを進めながら、応用研究項目であるプラズマ閉じ込め媒質を用いない新しいレーザーピーニング手法の早期確立を目指す。さらに、本研究計画実施後に計画していた新しい研究計画を前倒しで進める。すなわち、フェムト秒レーザー駆動衝撃圧縮過程のその場計測による材料強度発現機構の解明に関する研究である。具体的には、フェムト秒レーザー駆動衝撃波による材料の圧縮過程における格子面間隔と格子欠陥の挙動をそれぞれ高輝度超短パルスX線プローブおよび電子線プローブで計測することによって材料の塑性変形の起源を明らかにし、理想強度に関する統一的見解を得る。これらのプローブはそれぞれ別のプロジェクトで開発中であり、開発されたものを応用的に用いる。
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Causes of Carryover |
平成26年度内に購入する予定であった材料の納品が遅れ、平成27年度に納品されることになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度内に購入する予定であった材料の納品が遅れ、平成27年度に納品されることになったため平成26年度の研究費に未使用額が生じたが、平成27年度に納入されるため、平成27年度に実施する予定の研究計画と併せて実施する。
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Research Products
(18 results)