2015 Fiscal Year Research-status Report
間接電解法による酸化チタン厚膜の作製と色素増感太陽電池への応用
Project/Area Number |
25420782
|
Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
千金 正也 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究主幹 (40416326)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 酸化チタン / 膜 / 色素増感太陽電池 / 電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン源であるチタン乳酸錯体:チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド(TALH)と、硝酸アンモニウム(AN)を含む水溶液を用いて、間接電解による製膜をおこなった。ステンレス板をダミー電極とし、マスキングテープをスぺーサーとして、これらを挟む形で、目的とする基板:石英ガラスを、ダミー電極近傍に向い合せに設置した。対極をPt板として定電流電解還元し、目的とする基板上にTiO2膜を製膜した。 本年度は、基板-ダミー電極間隔Dを変化させ、析出量に関する影響を調べた。ダミー電極に厚さ0.06mmのマスキングテープを上下2ヶ所に貼り、その間30 mm×15mm部分を露出、このマスキングの上に厚さ0.1mmのマスキングテープを上下に1枚以上貼り付け、その上に基板を設置した。厚さ0.1mmのマスキングテープの枚数を変えることで、Dを0.06mm(0.1mmのテープ無し)、0.26、0.36、0.56、0.76、1.06mmの6種類に調節した。電解は、30 mm×15mm部分のうち、電解液バルクに下5mm×15mm の部分を浸漬し、設定電流−7.5 mA; 設定通電量−75 C一定とした。結果、どのDの場合にも、毛細管現象によって、基板上で、電解液バルクの液面よりも上の部分にも膜が析出したが、Dが広がると析出面積が減少した。これは、毛細管現象における液面高さが、管の内径に反比例することから、理解できる。こうした膜において、下端から上端までの析出量の分布を、蛍光X線のスポット分析によって調べた。Dが最も短い0.06mmの場合以外、いずれも液中での析出が多く、高い位置になるに従ってダラダラと減少した。この原因については、間隔変化によるTALHの拡散の変化が影響していると考え、さらに検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
間接電解法による酸化チタン膜作製において、添加する硝酸アンモニウム濃度を変化させ、膜厚を増加させることができたが、硝酸アンモニウム濃度をあまり多くすると、同時に膜質の低下も認められた。こうしたことから、数mm程度の局所的には膜厚4μmの膜が得られたが、平均膜厚は2.3μmにとどまった。すなわち平成27年度終了時点で、目標とする10μmに達していない。いっぽう、製膜と熱処理のくりかえしによって透明電極上に酸化チタン膜を作製し、色素増感太陽電池を構築して、特性評価した結果、変換効率2.1%を記録した(短絡電流密度3.89mA cm-2、開放端電圧0.809V、Fill Factor 0.674)が、目標値5%には達していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
硝酸アンモニウム濃度については、通電量とともに膜が順調に成長することが見込まれる0.1Mまたは0.2Mを採用する。平成27年度、ダミー電極-基板間距離の製膜面積に及ぼす影響と、液面からの距離に対する分布を調査した。この調査を進め、色素増感太陽電池(DSSC)用酸化チタン膜の作製に生かす。たとえば、DSSCを評価するためには、5mm角の領域に製膜しているが、この領域に、より厚く、より均一に製膜できるために、ダミー電極-基板間距離や、基板のセッティング位置に最適条件が存在するはずであり、それを見出す検討をおこなう。また、TALHの拡散を考慮した析出メカニズムの解明にとりくむ。
|
Causes of Carryover |
現在得られている酸化チタン膜は、均一性が悪く、厚さについても当初の目標(10μm)を達成していない。しかし、添加剤濃度のコントロール、ダミー電極-基板間距離の制御によって、均一で厚い膜が得られる見通しがついている。さらに、色素増感太陽電池に用いた場合の特性として、変換効率2.1%を記録し、上記膜厚と均一性をクリアして、さらに向上させることが可能である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
基板(石英ガラス、透明電極)70,000円 試薬 65,000円 論文投稿費 30,000円
|