2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420788
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大笹 憲一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90111153)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Al基合金 / デンドライト組織 / フラクタル次元 / 無次元周囲長 / 部分凝固時間 / 1/3乗則 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究成果としてAl-Si合金の一方向凝固実験により,縦断面と横断面のデンドライト組織形態は異なるが,そのフラクタル次元は部分凝固時間が同じであれば等しくなることを明らかにした.この結果を確認するために,本年度では斜断面のデンドライト組織のフラクタル次元も測定した.その結果,部分凝固時間が同じであれば縦断面,横断面,斜断面に観察されるデンドライトのフラクタル次元はほぼ等しいことを確認した.この結果は従来デンドライト2次枝間隔から推定していた部分凝固時間が,2次枝間隔測定が困難な条件でも簡便に求めることが出来る可能性を示している. 続いて凝固組織形態を評価するパラメータとしてフラクタル次元とともに無次元周囲長の有効性について検討した.従来の単一デンドライトに対する無次元周囲長の定義を拡張し,実組織の断面に2次元的に観察される複数の初晶の総面積とその総周囲長を測定し,その総面積と等しい円の周囲長と測定した総周囲長との比として新たに定義した.その結果,フラクタル次元と同様に部分凝固時間が等しければ縦断面,横断面,斜断面の無次元周囲長はほぼ等しくなることを明らかにした. 試料をAl-Cu合金に拡張した.Ai-Si合金の針状共晶形態に対してAl-Cu合金の層状共晶形態においても昨年度に開発した初晶形態の識別アルゴリズムが有効であることを確認した.また部分凝固時間が同じであれば縦断面,横断面,斜断面のフラクタル次元および無次元周囲長は同じであること,および両パラメータは部分凝固時間の1/3乗と逆相関を持つことを明らかにした.フラクタル次元および無次元周囲長が1/3乗則と逆相関を持つことは,両パラメータがオストワルド成長を反映していることを示している.また,初期Cu濃度が増加するとフラクタル次元および無次元周囲長の値は増加することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の当初の予定ではフラクタル次元を測定した試料から引っ張り試験片を作成し,引っ張り試験を行い,フラクタル次元と機械的特性の関係も求める予定であったがそこまで至らなかった.また25年度で実施出来なかったAl-Cu2元系,Al-Si-Cu3元系合金に実験を拡張する予定であったがAl-Si-Cu三元系合金の一方向凝固実験は行われておらず,その意味では計画より遅れていると言える.しかし,代わりに当初予定していなかった斜断面でのフラクタル次元を測定し,部分凝固時間が同じであれば任意の断面で測定したフラクタル次元がほぼ等しくなることを十分に確認出来ている.このことは,今後のフラクタル次元の工学的応用を考える上で重要な成果と言える. また,当初計画していなかった新しい定義による無次元周囲長でも部分凝固時間が同じであれば任意の断面で観察される値がほぼ等しくなることを明らかにすることが出来ている.フラクタル次元は1~2の範囲で変化するのに対し,無次元周囲長は1~10の範囲で変化することから,フラクタル次元よりも測定時の誤差を減少させることが期待される.このことは,今後の工学的応用を考える上でフラクタル次元に加えて無次元周囲長の有効性を示し,重要な成果と言える.また,無次元周囲長も合金種が変わっても柱状晶領域,柱状晶-等軸晶遷移領域,等軸晶領域の組織形態の差にかかわらず,一貫して部分凝固時間で整理できることを明らかにしたことも重要な成果と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定に従って,対象合金をAl-Cu-Si三元合金に拡張する.Al-Si-Cu合金の一方向凝固実験を行いフラクタル次元および無次元周囲長と部分凝固時間との関係を明らかにする.またSDASとフラクタル次元および無次元周囲長との関係を明らかにし,多成分系合金のフラクタル特性を明らかにする. また,当初の予定に従ってフラクタル次元および無次元周囲長を測定した試料から引っ張り試験片を作成し,引っ張り試験を行ってフラクタル次元および無次元周囲長と機械的特性の関係を求める.材料試験と平行してAl基合金に関して従来行われていたSDASと機械的特性に関する文献調査を行う.SDAS-フラクタル次元の関係から,フラクタル次元-機械的特性を関係づける. 実測した無次元周囲長から共晶凝固時の固相率における固液共存体の透過率を求めることを検討する.固液共存体の液相領域を毛細管の束として扱う透過率モデルを用いる.モデル中の液相チャンネルの曲がり具合を表すパラメータ(tortuosity factor)に実測した無次元周囲長を適用することにより透過率を求める.これにより無次元周囲長を用いた透過率評価の可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
予定していた材料試験が次年度に延期されたために,材料試験片の作成費がかからなかったことおよび材料試験の経費もかからなかっためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期された材料試験の費用および材料試験片の作製費に充てる予定である.
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