2014 Fiscal Year Research-status Report
金属マグネシウムを用いた排水処理の開発に関する基礎研究
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25420793
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 秀行 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90213074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高須 登実男 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20264129)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属マグネシウム / 排水処理 / スクラップ / 反応解析モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
環境保全の観点から排水基準の強化が進んでおり、高効率かつ低コストの排水処理法が求められている。金属Mgを用いた新しい技術を多方面で実用化していくためには、工業的見地からの処理の定量評価とそれに基づく最適化が必要である。 Niメッキで大量に発生する部品洗浄排水に含まれるNi,Bの除去と排水を処理するために共存元素による影響や処理助剤の効果や除去機構の解明を目的に、Ni1000mg/L、B100mg/L、初期pH5の模擬洗浄水に金属Mgを添加後、110minでNaOHを加えpHを10.5にする回分式処理試験を実施した。 金属Mgの添加だけでもNiは20minで排水基準値2mg/L以下になるが、B濃度は50mg/Lまでしか下がらない。MgCl2を供給する目的でHClを事前添加し、初期HCl0.49mol/L以上でBは排水基準値10mg/L以下になった。この際、撹拌停止後、10min静置で低下することが分かった。HCl0.49mol/Lでは、初期Ni濃度によらず、B濃度は6mg/Lまで低下する。 金属Mgを用いた排水処理において、装置の大型化に利用できる撹拌動力などの因子が金属Mgの溶解速度に及ぼす影響を定量的に明かにすることを目的とし、除去物質を含まない精製水200mLにHClでpHを1、液温30℃に調整した溶液に金属Mgを4.0g添加し、翼径55mmの2枚パドル翼で攪拌速度を100、200rpmの2条件で実験して、pHとトルクを連続的に測定した。得られたトルクから撹拌動力を算出し、金属Mgと実験溶液との溶解速度の関係を調べた。金属Mgを添加すると撹拌動力は上昇した後、減少し安定した。pHを10.5にあげるとMg(OH)2が析出するため撹拌動力が増加した。撹拌速度を高くして撹拌動力をあげることで、水素イオン減少速度を上げることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
回分式処理試験を実施し、Mgの酸化溶解とMg(OH)2の析出の基本現象は、ある程度定量評価できた。得られた沈殿物の性状や組成等の解析においては、洗浄方法や乾燥方法の検討を行ってEPMAやXRDで解析を進めて除去機構の解明を行ったが、水分と多量のMg(OH)2に対し除去対象物質が非常に少なく、除去機構の解明が不十分であった。 各種除去対象物質(B,Zn,Cr(III),Cr(VI),As(III),As(V)等)を取り上げて、構築した反応解析モデルを用いて、除去挙動を調査したが、Niメッキ洗浄排液のNi,Bの除去と除去機構解明に時間を要したため、Znの検討までしか行かず、Cr(III),Cr(VI),As(III),As(V)等の除去対象物質まで手が回らなかった。 反応解析モデルで条件を絞り込んだ上で、Mg表面での反応の定量評価、Niの回分式処理試験と同様の実験を実施し、必要な速度因子の値を取得し、大量の排液を効率的に処理するには、処理の連続化が必要になるので、トルクメーターで得られたトルクより撹拌動力を求めた。熱力学的平衡状態計算ソフトFactSageを用いてpHとNi,B,Mgイオン濃度の関係、B,Mgの形態の検討を行った結果、実験結果とよく一致が見られたが、計算から予想される生成物の確認はできなかった。 メッキ液に共存するNiとBの共存の影響、B除去に及ぼすMgCl2といった処理助剤の影響についても模擬洗浄水を設定し試験を行い、除去対象物質及び共存種による除去挙動の違いはわかったが、理由を明確にすることができていない。また未知物質について、速度因子の値の迅速な取得方法を提案できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
高効率かつ低コストの処理方法として、金属Mgの強い表面活性を利用した排水処理法を開発するため、現在問題となっている除去対象物質について検討を行い、除去挙動の違いを明確にする。 回分式処理試験を実施し、Mgに関する基本現象はある程度定量評価できたが、得られた沈殿物の性状や組成等の解析が不十分なために除去機構の解明が十分でない。沈殿物については、洗浄方法や乾燥方法のさらなる検討を行ってEPMA、XRD、TG-DTAで解析を進めて除去機構の解明を行う。 板状Mgを各水溶液に浸漬させて発生する水素ガスを捕集し、ガス発生速度より反応速度解析試験を実施し、Mg表面で生じる反応について速度と生成物の性状の観点から調査を行い、反応速度を定量評価する。また各種水溶液において自然電極電位測定、サイクリックボルタンメトリー法、インピーダンス法を用いて評価を続ける。電気化学的手法で測定を実施し、反応速度因子にかかわる基本情報を取得したが、Mg表面での生成物の性状や組成等の解析が不十分なために、洗浄方法や乾燥方法を改善し、EPMAやXRDで解析を進めて除去機構の解明を行う。 各種物質の除去についての検討は、除去対象物質にCr、As等を取り上げて、前年度までに構築した反応解析モデルを用いて、除去挙動を調査する。反応解析モデルで条件を絞込んだ上で、前年度のマグネシウム表面での反応の定量評価、Niの回分式処理試験と連続式処理試験と同様の実験を除去対象物質に対して実施し、必要な速度因子の値を取得する。 総括は、本年度の検討、調査結果をまとめ、除去対象物質および共存種による除去挙動の違いを明確にするとともに、未知物質について速度因子の値の迅速な取得方法を提案する。さらに研究全体のまとめを行い、金属Mgを用いた排水処理における各種因子が処理特性に及ぼす影響を定量的に明らかにする。
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