2014 Fiscal Year Research-status Report
多分散ナノコロイドの湿式分級を目的とした超高空隙率ナノファイバー膜の開発
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25420801
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
向井 康人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303663)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノファイバー / ナノ粒子 / 分級 / 膜分離 / エレクトロ・スピニング / 繊維径 / 粒子径 / ゼータ電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
エレクトロ・スピニング装置で種々の繊維径のナノファイバー膜を作製した。孔径を測定し、同等の孔径をもつ従来の高分子精密濾過膜を用意した。この孔径よりわずかに大きなサイズの粒子と、この孔径の半分程度の粒子を用意し、これら粒度の異なる大小2成分を分散させて混合コロイドを調製した。これを試料液に用いてナノファイバー膜、高分子精密濾過膜の各膜による湿式分級試験を行った。その結果、いずれの膜でも大粒子は完全に捕捉されているが、小粒子の透過率は常にナノファイバー膜の方が高かった。すなわち、ナノファイバー膜の方が高い分級精度が得られ、その優位性が証明された。これは、ナノファイバー膜特有の三次元ネットワーク構造により大粒子が効果的に捕捉され、ナノファイバー膜特有の超高空隙率構造により小粒子がスムーズに透過するためである。実際に、ナノファイバー膜の粒子捕捉状態を走査型電子顕微鏡で観察したところ、大粒子が膜内部に侵入し、小粒子の透過を阻害しない程度の空隙を残しつつ膜内部で逐次的に捕捉されている様子が観察された。 次に、ナノファイバー膜による大小2成分の湿式分級試験を種々のpH環境下で行った。その結果、酸性および中性領域では分級精度の低下が観察されたが、アルカリ性領域では高い分級精度を維持することがわかった。この理由を明らかにするため、大小各粒子とナノファイバー膜のゼータ電位をそれぞれ測定した。その結果、アルカリ性領域では粒子、膜ともに極めて大きなマイナス電荷を持っているが、酸性側に移行するに従いマイナス電荷が急激にゼロに近づくことがわかった。すなわち、アルカリ性領域では粒子同士および粒子と膜との静電反発がかなり大きくなるため、大粒子はより内部まで侵入することができ、小粒子は大粒子群や膜の阻害を受けにくくなる。このように、静電的な反発力が大きくなるpH環境に調整することで高い分級精度が維持できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要設備のエレクトロ・スピニング装置を導入し、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ナイロン6など、種々の高分子材料でナノファイバー膜を製造することができ、100nm~500nmの範囲で繊維径を種々にコントロールすることができるようになった。積層方法の工夫により空隙率の制御も可能になり、最大で95%の超空隙率構造を実現することができた。 当初の計画通りpH環境が分級精度に及ぼす影響を明らかにし、高精度の湿式分級精度を維持するための有力な操作指針を獲得した。また、研究計画に沿ってナノファイバー膜の大粒子捕捉メカニズムと小粒子透過メカニズムを解明し、ナノファイバー膜が湿式分級のための濾材として優位である理由を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
主として、次の4点より研究を進める。 1)前年度に引き続き、種々の高分子材料を原料としてナノファイバー膜を製造し、最適な材質、繊維径、繊維長さ、積層密度、積層厚さ、有効細孔径などの諸条件を探究する。 2)撹拌式濾過システムを導入し、膜面上に剪断流れを作用させつつ分級操作を行い、分級精度に及ぼす撹拌速度の影響を明らかにし、膜面への蓄積粒子群を効果的に排除して分級精度を最も向上させる操作方法を究明する。 3)撹拌式濾過システムに超音波を照射しつつ分級操作を行い、蓄積粒子群の排除効果に及ぼす超音波強度や発振周波数、照射方向の影響を明らかにし、最も分級精度を向上させる操作方法を究明する。 4)これまでの研究成果を総括し、また、速度的な観点からの検討も加え、目的の分級精度と高い分離速度を両立する最適な操作指針を獲得する。
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Causes of Carryover |
主要設備として購入予定であった撹拌式加圧濾過システムは、研究計画の上では主に次年度の実験で使用する予定になっているため、次年度に導入することにした。なお、過年度は現有の加圧濾過システムでも実験遂行上問題は生じなかった。また、国内外での成果発表や論文誌への投稿は次年度に集中させることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
撹拌式加圧濾過システム(撹拌式セル+加圧タンク+精密圧力計など)を購入予定である。また、関連国際会議への出席や各種関連論文誌への投稿などの成果発表にも充てる予定である。
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