2015 Fiscal Year Annual Research Report
対イオンのScreening効果を利用した油水界面の安定化
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25420802
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
押谷 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70314656)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Screening効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
油滴を水中に分散させたO/Wエマルションや水滴を油中に分散させたW/Oエマルションは、我々の生活において、食品、化粧品、医薬品などとして利用されている。エマルションを製造する際、単に水と油を混ぜ合わせるだけでは、水と油が上下相に相分離するため、それを避けるために製造時に界面活性剤が加えられる。界面活性剤は、油と水の界面に存在することで界面張力を小さくし、その結果、安定した油水界面が形成され、相分離することなくエマルションが製造される。この界面活性剤の働きは、界面張力という油水界面のマクロな物性と関連するが、よりミクロな観点での界面活性剤の働きは十分に解明されていないのが現状である。以上の背景のもと、対イオンのScreening効果に注目した。油水界面において界面活性剤は親水基を水側に、疎水基を油側に向けて存在する。親水基は電荷を持つために互いに静電的に反発しあい、このままでは安定した油水界面が形成されないために、親水基とは反対の電荷を持つ対イオンがその静電反発を抑えることで(対イオンのScreening効果)、油水界面が安定化されるのではないかと考えた。まず界面活性剤濃度を変化させ、種々の塩添加を行い対イオンのScreening効果とエマルションの安定性の関係を検討し、特に塩の種類により違いが見られる興味深い結果が得られた。一方、現在、産業界でのニーズが高まっているSurfactant-freeエマルションの安定性に対するpHの影響を検討し、対イオンとなるプロトンの量が多い酸性域ではゼータ電位の絶対値の低下に伴い相分離が顕著となることが明らかとなった。これらの結果は、対イオンによるScreening効果というよりミクロな現象がエマルションの安定性に大きく影響を及ぼすことを示しており、得られた成果は工学的に有用であると考えられる。
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