2015 Fiscal Year Annual Research Report
水中の疎水性表面間に働く長距離性引力の本質と起源の探究
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25420803
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石田 尚之 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80344133)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 疎水性引力 / 原子間力顕微鏡 / 疎液性引力 / キャビテーション / エントロピー力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、異なる疎水度を持つ表面間における相互作用の直接測定を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。また引力の起源解明に資するため、半径数nm~数百nmの微小な曲率半径のAFM探針表面と、基板間の相互作用測定も行った。 シランカップリング剤を用いて疎水化した粒子(接触角108°)と未改質の親水性シリコンウェハ表面間には、付加的な相互作用は観察されなかった。しかし、接触角40°程度に弱く疎水化した表面と完全に疎水化した表面(接触角108°)間には、van der Waals力よりも長距離の約5-10nmから引力が観測され、一方の表面の疎水度が高ければ、もう一方の表面がある程度の疎水度を有することで疎水性引力が作用することが示唆された。 シランカップリング剤で疎水化したAFM探針とシリコンウェハ表面間の相互作用測定では、疎水性引力の作用距離が半径100-200nm付近で大きく変化するという結果が得られ、この曲率半径の前後で引力の特性が変化していると考えられた。そこで相互作用の起源を推定するため、探針の接近速度を変化させて相互作用を測定したところ、探針の曲率半径が約100nm以上で引力の作用範囲がより長距離の場合には、接近速度が速くなると作用範囲は短くなった。一方、探針の曲率半径が約100nm以下で引力の作用範囲がより短距離の場合には、相互作用に表面接近速度依存性はほとんど見られなかった。この結果、探針の曲率半径が比較的大きい場合には、キャビテーションによる気相架橋が引力の起源と考えられるが、曲率半径が小さいとキャビテーションが起こりにくく、他の起源の引力が働いていることが示唆された。曲率半径が小さい場合の引力作用範囲は、数nmと分子のオーダーに近いため、引力の起源は溶媒分子の表面への配向によるエントロピー力などがあげられるのではないかと推測された。
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