2015 Fiscal Year Research-status Report
界面を高度に制御した環境調和型のレアメタル分離技術の開発
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25420806
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保田 富生子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60294899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 雅宏 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10211921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レアメタル / 分離回収 / 抽出 / 吸着 / イオン交換 / 希土類 / 貴金属 / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、レアメタルを高度に分離回収するために、新規抽出剤、イオン液体およびバイオマスを用いて、種々液液界面ならびに固液界面を形成し、実用化可能なシステムの構築を行うことを目的とする。これまでに用いた典型的イオン液体ならびにバイオマスの場合は、その有する官能基が貴金属に高い選択性を示し、官能基を界面にうまく配向させることによって、回収能力が上がることを示した。一方、希土類その他のレアメタルに対しては、選択性を増すために、金属特有のキレートを形成する官能基が必要であった。そこで新規に開発した抽出剤の抽出特性を検討し、その官能基を担体表面に配向させた吸着剤の開発を行った。具体的には次の通りである。 合成方法ならびに基礎的知見を得るために、担体としてまず入手し易いシリカゲルを用い、これに2段階の合成ステップにより、アミノ基を有するジグリコールアミド酸型の官能基を導入した。この官能基を有する抽出剤は、希土類金属(Sc)を選択的に分離することから、その抽出分離を調製の指標とした。調製した吸着剤により、Scを含む遷移金属の吸着を行った結果、抽出剤を用いたのと類似の吸着分離挙動を得ることができた。即ち目的金属を選択的に認識する官能基の導入によってその金属の吸着剤が調整可能であることを示した。官能基導入サイトを多く有する担体ほど、官能基導入量が多く高い吸着容量が得られた。 実用性の観点から、新たに市販のスチレン―ジビニルベンゼン素材の弱塩基性イオン交換樹脂を担体としてシリカゲル担体と同様の方法で吸着剤を調製した。金属イオンの吸着挙動および吸着剤としての特性を調べることにより、実用可能なイオン交換樹脂の調製の指針を得た。レアメタルを分離する抽出剤官能基の固定化により、その分離材の開発が可能となった。種々レアメタルの回収へ応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イオン液体を用いた液-液, 固-液界面形成によるレアメタル分離、ならびに天然素材界面(表面)の官能基による分子認識を検討し、それぞれ貴金属に対して有用であることを示した。一方その他レアメタルの分離については、特有の官能基が必要であり、また近年の希土類市場の動向から、イオン液体よりは低価格の素材が望ましく、工業用抽出剤を用いた抽出システムあるいはそのための抽出剤を開発した。その官能基を高分子表面に配向させることにより、イオン交換樹脂を調製することができた。新規抽出剤ならびにイオン交換樹脂は、レアメタルの高度分離にとり有用なツールとなり得る。実液での使用も可能であることを確認しており、概ね当初の目的を達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
吸着(イオン交換)法は液液抽出とともに貴金属の分離に有用である。競争抽出がある場合は、抽出されやすい金属を除去することにより、他のレアメタルの抽出容量が向上する。本研究課題で吸着の基礎的検討を行った酢酸セルロースファイバーは、安価で焼却が容易である。金のみを認識することから、携帯電話など様々な元素を含む原料からの分離へ適用可能か焼却回収までを含め検証し、その排出液からのレアメタル回収に繋げたい。 イオン交換樹脂の開発では、一つの例として既存のイオン交換樹脂を担体として用いた。金属イオン認識官能基導入は、担体の導入反応サイト数に依存する。そこでイオン交換容量を向上させるために、反応サイト数の多いイオン交換樹脂の利用が必要である。新たなイオン交換樹脂の探索と合成の検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、人件費が発生しなかった。また、材料の一部は提供を受けることができ、当初計画していた調査や合成ステップを効率的に進めることによって経費を節約することができた。これにより新たな分離システム開発に着手することができた。これらの成果を、学会や論文等で発表するには、分離の再現性の確認やシステムの最適化を図る必要がある。そのための材料や分析のための費用が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、概ね合成試薬、樹脂類、イオン液体、ガラス器具類、および分析用のアルゴンガス等(1300,000円)の物品費および分析機器使用量(300,000)である。
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