2013 Fiscal Year Research-status Report
不確実性を有する離散型生産システムの設計・運用支援環境の開発
Project/Area Number |
25420815
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橋爪 進 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60242913)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶌 智之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80262864)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 離散事象システム / 不確実性 / ペトリネット / 確率分布の学習 / クリティカルパス |
Research Abstract |
本研究の目的は,不確実性を有する離散型生産システムを対象に,システム構成とその下での運用方策の同時最適化手法を開発するとともに,それに基づく設計・運用支援環境の開発を行うことである.このなかで平成25年度は,そのために必要なシステムモデル表現手法とそのモデルの構築手法の開発を行った.得られた知見は以下のようである. (1) 生産システムのモデルとして,離散事象システムの定性モデルであるペトリネットに処理時間の不確実性を表す確率分布を導入したモデルを考え,そのモデルをもとに処理完了時刻の推定法,および各処理がクリティカルパスに含まれる確率分布を求める方法を考案した.これより,システム構成と各処理時間の不確実性を表すモデルが与えられたとき,生産システムのネック工程を抽出できることがわかる. (2) 処理の流れを表すペトリネットモデルの事象間の因果関係をもとに,異常時における事象の発生間隔に関する確率分布を学習により求めておき,そのモデルをもとに異常診断を行う方法を考案した.これより,システム構成を表す定性モデルの情報の活用が,システムの処理時間や移送時間および事象発生系列の不確実性を表す定量モデルの効率的な学習に有効であることが示唆された. (3) 生産システムに要求される処理形態(実行可能な処理順序の集まり)が与えられたとき,その処理形態を実現するペトリネットモデルを構成する1つの方法を考案した.考案した方法は,処理形態が表す事象間の因果関係を線形不等式の形に変換し,それらを制約条件とする0-1計画問題を繰り返し解くことによりペトリネットモデルを構成しようとするものである.これより,システム構成を表す定性モデルをシステマチックに構成できることがわかる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画は,不確実性を有する離散型生産システムを表すためのシステムモデル表現手法とそのモデルの構築手法の開発を行うことであった.本研究では,システム構成(ハード)とその下での運用方策(ソフト)の同時最適化をモデルベースで行うため,そのモデルに求められる要件としては,システム構成の変更が容易であること,処理時間や処理工程の不確実性を表現できること,システム構成変更に伴う不確実性の変化を扱うことができること,ネック工程の導出が可能であること,が挙げられる.これら要件の視点から平成25年度に提案したシステムモデル表現手法および構築手法の評価を行うと,以下のようである. ・システム構成を表すために用いたペトリネットは,処理の流れや制約をグラフで表したモデルであり,システム構成の変更には柔軟に対応できる.また,このモデル構築は,実績の欄内の(3)に示すように,システマチックに構成する1つの方法を開発している. ・ペトリネットのトランジション(ものの処理や移送に相当)の発火時間や非決定的な発火に確率分布を付加することにより,処理時間や処理工程の不確実性を表す.その妥当性は,実績の欄内の(1)に示すように,このモデルから処理完了時刻の推定やクリティカルパスの導出が可能であり,合わせてネック工程の導出が可能であることが示唆される. ・処理時間や処理工程の不確実性を表す確率分布の構築は,実績の欄内の(2)に示すように,ペトリネットモデルの情報を活用して操業データから効果的に学習できる. 以上より,提案したシステムモデルは要件をほぼ満たすことから,達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した.しかしながら,システム構成変更に伴う不確実性の変化については,今のところシステム構成変更の度に学習するによる対応しかなく,平成26年度も引き続き検討する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画および平成25年度の実績およびその達成度より,平成26年度は以下のことを行う予定である. (1) システムモデル構築手法の開発:実績の欄で述べたように,システム構成とその下での運用方策の同時最適化を行うためのモデルを開発したものの,システム構成変更に伴う不確実性の変化について柔軟に対応できるとはいえない.このためベイジアンネットワークを用いて,システム構成変更に伴う新たな確率分布の導出について検討する. (2) 運用方策の獲得手法の開発:平成25年度に開発したシステム表現手法および構築手法を用いて作成された生産システムモデルをもとに将来の状態を推定する方法を開発し,それを用いて最適運用方策を獲得する方法を開発する.将来の状態推定については,シミュレーションによる方法,各処理の確率分布から解析的に求める方法,動的ベイジアンネットワークを用いる方法を検討する. (3) ネック工程の導出・評価・解消手法の開発:ネック工程は,装置の稼働率,装置・バッファでの滞留状況などの情報から推測されるが,それが本質的にネックとなっているのか,ネックの原因が他の部分にあるのか,あるいはどの程度のネックになっているかを,システムを流れるものの発生確率や,処理時間,工程変更の発生率を変化させながら感度解析とモデル構造から検討する方法を開発する.また,ネック工程と判断された装置やバッファに対して,装置の能力,バッファの容量を変化させてネックの解消方策を探る方法も併せて開発する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は小額であり,当該年度はほぼ予定通り使用した。 次年度使用額は小額であり,当初の予定通り次年度は使用する予定である.
|
Research Products
(6 results)