2014 Fiscal Year Research-status Report
高分子ミクロン粒子の低環境負荷型量産化プロセスの開発とその応用
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25420817
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 徹也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10432684)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソープフリー乳化重合 / 高分子ミクロン粒子 / 低環境負荷型プロセス / 電解質 / 油溶性開始剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で界面活性剤を用いず水系で油溶性開始剤を用いたソープフリー乳化重合で負帯電の単分散微粒子が合成できることが分かっている。本手法に電解質を添加すると従来の1/4の時間でミクロン粒子が合成できる。この技術を工業化・プロセス化するにあたり,添加する電解質種が合成される粒子物性に与える影響について詳細に調べた。 典型的な油溶性開始剤AIBNを用いたスチレンのソープフリー乳化重合において,電解質を添加し,ミクロン粒子の合成を行った。その結果,添加する電解質が塩化物イオンや硝酸イオンを含む強酸の塩の場合,酢酸イオンを含む塩を添加するよりも粒子の成長が促進された。これは,強酸の塩により溶液全体のpHが下がり粒子の表面電位が低下し凝集成長が起こりやすくなったためであると考えられる。またアルカリ土類金属であるマグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムの二価のイオンを添加したところ,陽イオン半径が大きくなるに従って,粒子径が大きくなることが明らかになった。これはイオン半径が大きいと水和力が弱いために,生成微粒子周りの電気二重層が圧縮される効果が強まり,凝集成長が促進されたためであると考えられる。つまり,油溶性開始剤を用いたソープフリー乳化重合系においてミクロン粒子を合成する場合には,強酸の塩で生成微粒子の反対符号のイオン,本系では陽イオンの半径が大きいものが効果的であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクロン粒子の合成に際して,最適な電解質を実験的に明らかにすることができた。 これは研究目的である低環境負荷型のミクロン粒子の合成プロセスの開発に向けて,重要な知見であると考えられる。また,工業プロセス化を目指して粒子濃度の向上に向けた研究についても既に着手しており,これまでの手法に比べて4倍の粒子濃度向上を実現した。次年度で申請時の研究目標を達成できるものと想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子濃度を向上させるために,漏斗とビーカーを駆使して,油溶性開始剤とモノマー相を完全に分離した状態を作り,水相中に僅かに溶けたモノマーと開始剤が電解質存在下でミクロン粒子ができるプロセスを既に構築しており,このプロセスでの濃度向上に関する実験を行う。また水相中に無帯電の水溶性開始剤を仕込むことで,水相中での重合反応を促進させることも検討しており,これらを併用することで最終年度で工業レベルで用いられる粒子濃度にまで向上させることができるものと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は粒子濃度測定装置を購入し,当初の予定通りの学会発表を行った。 次年度に購入計画には入れていなかった蒸留水製造装置の購入が急遽必要になったので,予算を少し余らせることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
異動に伴う研究室立ち上げに際して,蒸留水製造装置の購入に充てたいと考えている。 また当初の研究計画の通り,国際会議での口頭発表に採択されたので,最終年度も計画通り研究と予算を遂行できると考えている。
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Research Products
(8 results)