2014 Fiscal Year Research-status Report
超臨界流体活性化法を用いた分子認識機能を有する多孔性配位高分子膜の開発
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25420821
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
松山 清 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (40299540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超臨界流体 / 多孔性配位高分子 / 分子認識 / 触媒 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性配位高分子(PCP)および金属-有機骨格体(MOF)とよばれる多孔性金属錯体は、従来のゼオライト・メソ孔シリカ・活性炭等の吸着や膜分離材料と比較して分子デザインが極めて容易であり、優れた目的物質の吸着・分離特性、電気化学的性質が報告されており、その工業化が国内外で期待されている。今年度は、PCPおよびMOFの微細な細孔内部に貴金属ナノ粒子を含浸・固定化することで特異的な電気化学的性質を発現し、「分子認識性を有するガス分離膜」、「高選択性・高活性を有する触媒」、「新たな薬剤を探索するための分子認識デバイス」への応用の可能性を示した。従来手法である通常の汎用溶媒を用いたPCP/MOFの分子レベルの微細なナノ空間の化学修飾や貴金属ナノ粒子の固定化技術の開発は、界面張力による構造崩壊や低浸透性により、微細構造が制御されたPCP/MOF-貴金属ナノ粒子複合体の製造は極めて困難であった。本研究では、超臨界状態の二酸化炭素が、他の汎用溶媒に比べ極めて大きな浸透力、極めて小さな界面張力(もしくはゼロ)といった特異な性質を有することに着目し、ナノレベルの微細な構造を有する精密材料の合成に適用可能であり、超臨界流体技術がPCP/MOFの高機能化に極めて有効であることを見出し、研究に取り組んできた。具体的には、超臨界流体活性化法により、通常の減圧乾燥法に比べ、多孔性配位高分子の比表面積が20倍以上に増加し、ガス吸着量も100倍以上に増加することを確認できた。さらに、多孔性配位高分子の高比表面積化や細孔内部への生理活性物質や触媒前駆体の高濃度充填や構造制御に極めて有効であることを解明し、特許出願および論文投稿を実施した。また、PdやPtナノ粒子をMIL-101(Cr)やCu3BTC2の細孔内部に分散・固定化できることを示し、優れた触媒活性や電気化学的特性を有することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超臨界流体を用いた乾燥法により、多孔性配位高分子(PCP/MOF)の比表面積が劇的に増加し、細孔構造が活性化されていることを示した。とくに超臨界乾燥法において、多孔性配位高分子の比表面積の増加は、それらの細孔構造に大きく起因することを明らかにした。また、超臨界流体を用いた含浸法により、従来の汎用溶媒では困難なされてきたシングルナノレベルの微細な細孔内に化学物質を注入できることを示してきた。超臨界流体の含浸法により、生理活性物質であるイブプロフェンの含有量を30wt.%程度まで向上させることに成功した。また、Ptナノ粒子を細孔内部に固定化することに成功し、高い活性を有する触媒の調製に成功した。このような超臨界流体特有の多孔性配位高分子の改質技術を用いれば、従来の多孔質材料の性能を凌駕する優れた分子認識能を有する多孔質材料の開発が可能であり、分子認識の可能な、ガス分離膜、生体認識素子センサー、触媒の開発が可能である。このような理由から、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
高選択性・高活性を有するPCP/MOFを担体とするナノ粒子触媒を開発するために、既に超臨界流体法により調製したPCP/MOF-貴金属(Pt,Pd)複合体の最適な生成条件について検討する。すでに、超臨界流体法では、汎用溶媒を用いて調製した触媒に比べ、数倍の活性を有していることを本研究グループでは確認している。そこで、さらなるPCP/MOF複合体の独自の触媒としてのポテンシャルを引き出すため、MOF/PCPを構成する有機配位子への分子認識を有する化学修飾を試み、選択性の向上を目指す。 また、新たな薬剤を探索するための分子認識デバイスとしてのPCP/MOFの応用方法を検討する。水晶振動子(QCM; Quartz Crystal Microbalance)上に成膜した多孔性配位高分子(PCP/MOF)を用いて、高感度の分子認識デバイスとしての薬剤探索デバイスの開発を試みる。モデルケースとして、敗血症・感染症に大きな影響を及ぼすことが知られている細胞質内タンパク質HMGB1の抑制薬剤のモデル薬剤物質の探索としての利用について検討する。HMGB1を固定化した多孔性配位高分子膜を水晶振動子上に成膜し、HMGB1と薬剤との相互作用を水晶振動子により解析する。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、超臨界含浸法を用いて調製したPCP/MOF-貴金属ナノ粒子複合体の微細鋼構造を高解像度のTEMにより解析するために、前倒し請求を実施した。しかしながら、TEM解析が当初の計画より順調に進展したため、次年度の繰り越し予算が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本研究の最終年度であり、PCP/MOF-貴金属ナノ粒子複合体の分子認識デバイスの製作に予算を使用する(主に試薬)。
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Research Products
(5 results)