2014 Fiscal Year Research-status Report
担体構造の多面的定量と多変量解析を基盤とした不均一系触媒の構造性能相関の解明
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25420826
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
寺野 稔 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90251975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷池 俊明 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (50447687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Ziegler-Nattaオレフィン重合触媒 / 構造性能相関 / 担体構造の多面的定量 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
不均一系触媒の構造と性能の相関の解明は触媒化学における究極目標の一つである。工業的なオレフィン製造の大部分を担う不均一系Ziegler-Nattaオレフィン重合において、触媒担体の構造と重合性能の相関は産業界において古くから経験的に認識されていたが、学術的な研究例が少なく科学的な証拠はほとんど存在しなかった。また、高性能な重合触媒の担体は概して複雑な階層構造を有するため、定量的な構造分析が容易ではなく、触媒調製条件と得られる担体構造の相関も十分に研究されていなかった。本研究の目的は、Mg(OEt)2粒子の調製条件を介して様々な担体構造を有する触媒を合成し、構造の多面的な定量同定を行うことで調製条件と担体構造、及び、担体構造と触媒性能の相関関係を解明することである。具体的には以下の項目を達成する。 1.Mg(OEt)2粒子及び触媒担体構造の制御:Mg(OEt)2粒子の構造を網羅的な同定法によって定量化し、調製条件と粒子構造の詳細な相関図を作成する。これによって、これまで経験的に制御されてきた粒子構造をより系統的に制御し、様々な担体構造を有する触媒を得る。 2.担体構造の網羅的な同定法の確立:担体構造の同定は、担体がnmからumまでの幅広いスケールで不規則な階層構造を有すること、水分に非常に敏感であること等の理由によってこれまで十分に行われてこなかった。多様な分析法を組み合わせることで異なる条件下で調製された担体の構造を多面的に定量化する。 3.担体構造と触媒性能の相関の取得・担体構造の異なる触媒を用いてプロピレンとエチレンを主モノマーとして単独重合、及び、ランダム・ブロック共重合を行い、重合性能と定量化された担体構造との相関を取得し、高性能担体の設計に対する普遍的な知見を導く。 平成26年度は、平成25年度に確立した担体構造の定量化方法を基盤として項目1・3に関する検討を大きく進めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に触媒担体の構造定量化方法を定めたことにより、調製条件、担体構造、触媒性能間の相関を科学的に議論することが可能となった。そこで平成26年度は、ジブチルフタレートを有するMg(OEt)2系Ziegler-Natta触媒を対象として、Mg源・開始剤・撹拌速度・基質量・追添回数といった調製条件を変化させることで、構造の異なる触媒を調製した。得られた計32個の触媒の構造定量化を上述の方法によって行う一方で、プロピレン及びエチレンの単独重合あるいは1-ヘキセンとの共重合における性能を評価した。この結果、粒度分布・細孔容積分布・化学組成に関する種々のパラメータを説明変数、重合活性・コモノマー取込効率を目的変数とするデータセットを得た。 多変量解析を実施するためには、最低でも任意変数間の1対1相関がサンプル数に関して収束している必要があった。そこで、任意の説明変数と構造変数の相関係数をサンプル数の関数としてプロットした。サンプル数が10を下回る場合、相関係数はサンプルの選択によって大きく変化し、安定した相関を得ることが難しいことがわかった。一方で、20程度のサンプル数で相関係数が概ねサンプル数に依存しなくなった。この事実から、平成26年度に構築した32サンプル分のデータセットは、多変量解析を用いた構造性能相関解明(平成27年度)に十分耐えうるものであると結論され、進展は計画通りであると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、平成26年度に調製した32触媒の構造・性能をそれぞれ説明・目的変数とするデータセットの多変量解析を行い、構造性能相関を定式化する一方で、分析結果に照らしたデータ拡充を行う。 多変量解析には重回帰分析を用いる。対象とする触媒性能に影響する構造因子が未知であるため、網羅的な構造分析によって得られた相当量の構造因子を予め取捨選択することは不可能である。そこで、遺伝子アルゴリズムを用いて説明変数の組み合わせ最適化を実施する。回帰式を構成する説明因子の項数や分析に用いるサンプル数を変えることで、少なくとも定性的にその性質が変わることのない構造性能相関を導くことがゴールである。必要に応じて、特異的なデータ点の除去や不足サンプルの補填を行い、回帰式の決定係数、及び、予測力を向上させる。 以上の手段によって、調製条件による触媒担体構造の制御方法を提案し、さらに担体構造と触媒性能の相関に基づき、性能向上のための担体設計方針や性能発現機構についての知見を明らかにする。
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Research Products
(3 results)