2013 Fiscal Year Research-status Report
ホスファチジルイノシトールの精密高純度合成のための高機能改変酵素の開発
Project/Area Number |
25420830
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 雄吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50273214)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ホスホリパーゼ |
Research Abstract |
代表者が開発したホスファチジルイノシトール(PI)合成型PLD(PI-PLD)を用いると、ホスファチジルコリンとイノシトールという安価な原料からPIを酵素的に合成可能である。しかしなら、開発したPI-PLDはイノシトールの6個の水酸基に対する位置選択性が完全ではなく、天然型の1-PIに加えて他の一異性体も生成するという問題が有った。本研究ではPI-PLDの位置選択性を向上させることを目的として蛋白工学的改変を試みた。 本研究開始以前に代表者は本酵素の基質結合部位においてイノシトールを受容するポケットの「壁」を形成しているループに着目し、それを構成する6アミノ酸残基を一つずつ他のアミノ酸に置換した変異酵素群を作成し、位置選択性を評価した。その結果、186位と189位の変異が特異性向上に有効であることがわかっていた。この結果を受け、本研究では186位に対する5種の変異体(186V, 186M, 186T, 186L, 186S)、と189位に対する5種の変異体(189L, 189N, 189R, 189W, 189Y)の変異を組み合わせ、5x5=25種の変異酵素を新たに調製し、それらの位置選択性を分析した。その結果、NYRに186T/189W、186S/189W、186L/189Wなる三種の2重変異体の位置選択性の向上させることに成功した。特に、親酵素の位置特異性は1-PI/3-PI比が74/26であったのに対し、186T/189Wでは95/5にまで飛躍的に向上した。 また、PI-PLDの熱安定化を試み、分子表面に存在する不安定ループを除去する(ループトリミング)ことで、70度での半減期を10倍以上延長させることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イノシトール受容ポケットを形成するループ構造に変異を導入することで、1PI/3PI特異性が飛躍的に向上した変異型酵素を作出することに成功でき、今年度の目的はおおむね達成したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
イノシトール受容ポケットを形成するループ構造に変異を導入することで、1PI/3PI特異性が向上した理由の一つとして親酵素の186位グリシン周囲は分子内キャビティを生じており、これがより嵩高い残基に置換されたことにより、ループ構造がより剛直になり、揺らぎが減少したためと予想される。これを検証するため、各種温度で酵素反応を行い、位置選択性の温度依存性を比較する予定である。また、不安定ループ除去により作出した熱安定酵素と高選択型酵素の変異の「掛け合わせ」を行い、安定かつ選択性の高いPI-PLDの作成を試みる。
|