2014 Fiscal Year Research-status Report
ホスファチジルイノシトールの精密高純度合成のための高機能改変酵素の開発
Project/Area Number |
25420830
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 雄吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50273214)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ホスホリパーゼD |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者が開発したホスファチジルイノシトール(PI)合成型PLD(PI-PLD)を用いると、ホスファチジルコリンとイノシトールという安価な原料からPIを酵素的に合成可能である。しかしなら、開発したPI-PLDはイノシトールの6個の水酸基に対する位置選択性が完全ではなく、天然型の1-PIに加えて他の位置異性体も生成するという問題が有った。本研究ではPI-PLDの位置選択性を向上させることを目的として蛋白工学的改変を試みた。 前年度、代表者は本酵素の基質結合部位においてイノシトールを受容するポケットの「壁」を形成しているループに着目し、それを構成する6アミノ酸残基を一つずつ他のアミノ酸に置換した各種の変異酵素群を作成し、位置選択性を評価し、親酵素と比較して1-PI選択性が飛躍的に向上する変異体の作出に成功した(親酵素の位置特異性は1-PI/3-PI比が74/26であったのに対し、変異体では95/5)。今年度は得られた高選択性変異体NYR-186Tを用いた酵素反応条件を種々検討した。 低温での反応によりその選択性はさらに向上し、10°Cにおいて1-PI/3-PI選択性は97/3 にまで上昇した。一般にイノシトールのようなポリオールを位置選択的に変換する場合、通常の有機合成化では反応させる位置以外を保護するのが常道である。今回の成果は無保護イノシトールを一カ所だけホスファチジル化に成功したという点で合成化学的にも大きな意味が有る。 さらに、酵素反応系に高濃度の塩を添加すると高い位置選択性を維持したまま、反応効率が飛躍的に向上することを見いだした。これまで全リン脂質中のPI含量が10%程度であったが、反応条件の最適化により50%程度まで向上することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イノシトール受容ポケットを形成するループ構造に変異を導入することで、1PI/3PI特異性が飛躍的に向上した変異型酵素を作出することに成功でき、さらに反応温度などの条件の検討により位置選択的かつ高収率で1PIを合成する事が出来た。したがって今年度の目的はおおむね達成したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により改変型PLDによる1PIの選択的合成の目処がついた。今後はさらなる収率向上をめざし、PLDの安定化、副生成物であるホスファチジン酸の除去、さらに固定化による酵素の繰り返し利用といったより実生産を意識した検討を行う。
|
Causes of Carryover |
当初購入を予定していた試薬類の一部が不要となったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の消耗品の購入に充当する予定である。
|