2013 Fiscal Year Research-status Report
バイラメラ空間内脱水酵素反応を利用した炭酸カルシウム中空ナノ粒子の気泡塔合成
Project/Area Number |
25420833
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉本 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80322246)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生体材料 / ナノ材料 / バイオリアクター / 酵素反応 / 生物・生体工学 |
Research Abstract |
酵素分子を内包させた二層のリン脂質膜構造をもつリポソーム(バイラメラリポソーム)を調製した。まず,粒子径を最小化した一枚膜のリポソームの調製を検討した。超音波照射法によりリポソームを調製したところ,平均粒子径は小さいが,比較的多分散のリポソームが得られる傾向が認められたため,細孔径30 nmの膜を通過させる方法でリポソーム調製を行った。その結果,平均径が100 nm以下の単分散リポソームが得られた。このリポソームは15 mol%のタンパク質へ共有結合可能な脂質を含有するため,酵素溶液と混合することにより,リポソーム表面に酵素が共有結合された。この際,脂質の分子構造に基づき,酵素分子間の共有結合を抑制して,リポソームと酵素を従来法に比べて高い選択性で結合させることができた。次いで,この酵素-リポソーム複合体を新たな脂質で内包することにより,バイラメラ構造をもつリポソームを調製した。モデル酵素として,D-アミノ酸酸化酵素を用いてリポソーム内の酵素の反応性を検討した結果,水と親和性の高い分子は外側の脂質膜に対する透過性が低いことがわかった。すなわち,カルシウムイオンのような水溶性の物質は二層の脂質膜間に安定に保持できる可能性が示された。さらに,リポソーム系において,炭酸脱水酵素による炭酸カルシウム生成反応を行うために,リポソーム系を模擬した種々の反応条件で,pH,温度,カルシウム濃度,リポソーム膜の各影響を詳細に検討した。その結果,リポソーム調製時に炭酸カルシウムを生成させないための条件と,リポソーム調製後に炭酸カルシウムの生成を誘導する条件を明らかにすることができた。荷電リポソームとカルシウムイオンとの相互作用についても,荷電脂質量とコレステロール含有量が異なる種々のリポソームの凝集の可逆性に着目して明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で特に重要となる,酵素を複合化したバイラメラリポソームの高効率な調製法を明らかにした。さらに,炭酸カルシウム生成反応に及ぼす諸反応条件の影響と脂質膜-カルシウムイオン間相互作用の特徴を明らかにした。これらの知見は,炭酸脱水酵素‐リポソーム系反応の制御において活用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
炭酸脱水素酵素をリポソーム内に複合化して,炭酸カルシウムの生成反応を検討する。特に,酵素と同時にカルシウムイオンをリポソーム系に安定に保持する手法が重要と考えられる。今後はこの点を含めて検討を行い,構造制御された炭酸カルシウム微粒子の調製へ展開する。
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