2014 Fiscal Year Research-status Report
トランスジェニックニワトリ卵を用いた経口免疫ワクチンによるアレルギー治療法の開発
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25420834
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河邉 佳典 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30448401)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子導入ニワトリ / アレルゲンエピトープ / エピトープペプチド / スギ花粉症 / ワクチン卵 / M細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、トランスジェニック鳥類作製技術を用いて、アレルゲンエピトープを遺伝子工学的に分子改変することで、腸管免疫系への活性化作用をさらに高めた経口免疫寛容誘導可能なワクチン卵によるアレルギー治療法の開発を目的とし、研究を進めた。スギ花粉アレルゲンエピトープをMHC分子のalpha鎖およびbeta鎖内に遺伝子工学的に組入れ、さらに抗体のFc領域と融合させた融合タンパク質として、遺伝子導入ニワトリの卵白中に生産させた。これまでに花粉症モデルマウスに遺伝子導入ニワトリ由来の卵白を経口投与したところ、くしゃみ回数等の花粉症症状を緩和させることができている。そこで、治療スケジュール終了後、卵白の経口投与したスギ花粉症モデルマウスを詳細に解析し、MHC-アレルゲンエピトープ含有卵によるスギ花粉症治療の効果を検証した。モデルマウスから採血を行い、血清成分を解析したところ、野生型ニワトリ由来の卵白を投与したマウス群と比較して、全IgE量ならび抗原特異的IgE量の低下が見られた。また、治療後のマウス肺の組織化学的評価を行い、炎症度を評価したところ、治療群のマウスでは炎症のスコアは低くなり、肺炎症の低減を確認することができた。スギ花粉エピトープを限定的にした場合でも、モデルマウスへの経口摂取で、より効果的に確実に腸管免疫寛容を誘導することができたと考えられる。一方、経口アレルゲンは特殊分化した上皮細胞であるM細胞のみより取り込まれ、腸管免疫系の樹状細胞やリンパ球を活性化させることがわかっている。粘膜上皮細胞に存在するM細胞の分化誘導を促すタンパク質として知られているRANKLの細胞外ドメイン領域をクローニングした。今後、腸管免疫系でより効果的に作用する分子改変を行い、遺伝子導入ニワトリ由来卵白を用いた経口免疫寛容誘導可能なワクチン卵によるアレルギー治療法を開発していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子導入ニワトリが卵白中に生産したMHC-アレルゲンエピトープペプチド融合タンパク質(MHC-Crp/Fc)の効能評価を、スギ花粉症モデルマウスに卵白を経口投与することで行った。くしゃみ回数等スギ花粉症症状を低減させることができたので、マウスの詳細な解析を行ったところ、血清中全IgE量ならびに抗原特異的IgE量の有意な減少が観察された。また、肺炎症の程度を抑えることができた。このことから、MHC-Crp/Fc含有卵白を経口摂取することで、花粉症症状を緩和させることができた。これらの研究成果を国際学会を含めた複数の学会に報告した。また、腸管免疫系でより効果的に作用する分子改変の一つとして、M細胞分化誘導因子RANKLの細胞外ドメイン領域遺伝子のクローニングを行った。大腸菌を用いて予備検討を行ったところ、適切な分子量サイズに目的遺伝子を発現させることができた。本年度はおおむね順調に実行することができ、目的を達成することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製ずみの遺伝子導入ニワトリ由来スギ花粉症アレルゲンエピトープ含有卵白およびTGF-β含有卵白を用いて、腸管免疫系への活性化作用をさらに高めた経口免疫寛容誘導可能なワクチン卵によるアレルギー治療法を開発していく。具体的には、M細胞へ標的化可能な分子のクローニングおよび生産を行う。CHO細胞や大腸菌を用いてM細胞標的型組換えタンパク質を生産させ、適切に活性を維持して生産されるかを、ウエスタンブロット法やバイオアッセイ等評価するとともに、目的タンパク質を生産する遺伝子導入ニワトリを作製する。M細胞標的型組換えタンパク質含有卵白のモデルマウスへの経口摂取で、アレルギー疾患に対する評価を行う。検証法としては、アレルゲンに対するくしゃみ回数、血清中におけるアレルゲン特異的 IgE ならびに IgG 抗体量、肺組織からの炎症解析のRT-PCR 解析)等を行う。また、リンパ組織におけるTGFbetaおよびIL10生産量ならびに制御性T細胞割合測定を解析する。モデルマウスの脾臓組織より採取した CD4+T 細胞培養中におけるサイトカイン分泌量の生化学測定を行うなど、アレルギーに関連する項目を多角的に解析する。
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Causes of Carryover |
ELISAによるIgE量測定においてスケールダウンをはかることが可能となり、高額な試薬(抗体等)の使用量を削減できたためである。しかしながら、次年度は最終年度であることから、検査検体が本年度よりも増加が見込まれるため、未使用額については次年度研究費と併せて使用する計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1)ウイルス生産、細胞培養のために高価な試薬である制限酵素・核酸抽出キット・抗体・血清・動物細胞用培地・遺伝子導入試薬などの種々の遺伝子工学関連試薬や、プラスチックおよびガラス器具購入費用、また少額備品購入費用(H26年度未使用額を併せて使用)2)研究成果公表のための旅費用(関連学会における成果発表と情報収集のために使用)3)論文投稿、英文校閲および別刷り費用 のために使用する。
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Research Products
(5 results)