2014 Fiscal Year Research-status Report
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25420838
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 光雄 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40220347)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レアメタル / セレン / 生物気化 / メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の先端科学産業では多様なレアメタルが利用されており、産業のビタミン剤と呼ばれるほど、製品等製造において、必須の金属材料となっている。一方、レアメタルはその名の示す通り、地殻中の存在量が比較的少なく、ほとんどの元素がベースメタルの鉱石に微量に含まれた状態で存在していることから、採掘や精錬、分離精製が技術的に困難であり、資源としての枯渇が懸念されている。さらに、ほとんどのレアメタルは特定の国に偏在しており、資源の自国内への囲い込みの動きも出てきている。世界でも有数の各種レアメタル消費大国である我が国において、その安定供給に向けた対策が必要とされている。本研究では、すでに金属気化機能(バイオボラタリゼーション)を有する微生物を対象に、レアメタルを気化するメカニズムを培養工学的観点と、遺伝子工学的観点から検討し、最終的には実用的なレアメタル回収システムの開発を行う。 本研究期間内では、レアメタルの1種であるセレンの気化能に関与する遺伝子の特定や、気化セレンの生合成に関する重要な因子の同定や最適化条件の決定を試みる。これら一連の研究を通じて、排水や廃棄物からのレアメタルのリサイクルを可能とし、他のメタルに応用するとともに、先端的手法の一つの指針となることを目指すものである。 先行研究のセレン酸・亜セレン酸の還元最適化をモデル系と考え、Pseudomonas stutzeri NT-I株による元素態セレンからメチル化セレンに還元する最適化条件を求める。そして、メチル化セレン合成に関与する因子の特定を行う。またセレン気化に関与する遺伝子の取得と機能解析を行う。以上のことをとりまとめ、回収向上のための一助とする
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養工学によるメチル化セレン(気化セレン)還元最適化の検討を以下の様に行った。本研究に用いているセレン酸還元細菌NT-I株はセレン酸、亜セレン酸を還元して元素態セレンを生成し、その元素態セレンを還元してメチル化セレンを生成する。メチル化セレン合成のための基質を検討したところ、非晶質の元素態セレン(赤色バイオセレン)が最もよく反応した。赤色バイオセレンを基質にして通気の影響を調べたところ、通気なしではメチル化セレンの合成は見られなかった。次に促進因子を調べたところ、メチル基を分子内に保有するメチオニンやメチルコバラミンを添加するとメチル化セレン能合成能が向上した。しかしS-アデノシルメチオニンは影響がみられなかった。 遺伝子工学によるメチル化セレン関与遺伝子の探索を以下のように行った。塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法でNT-I株における宿主ベクター系が確立できなかったことから、ハイドロゲル曝露法を試みた。プラスミドの大きさ、プラスミドを塗布する器具、塗布の仕方などの因子を種々変更して行ったが、NT-I株では形質転換体は見られなかった。次に、NT-I株のゲノム情報からメチル基転移に関係する遺伝子をセレンメチル化に関わる候補遺伝子と考えて、遺伝子増幅を行った。増幅した遺伝子DNAをセレンメチル化能の無い大腸菌を形質転換し、組換え大腸菌を赤色バイオセレン含有培地でメチル化能を分析した。その結果、4種類の組換え大腸菌全てが赤色から脱色し、そのうちの2種類の組換え大腸菌は退色が速く、物質収支の結果からガス状セレンを合成したのではないかと示唆された。以上のことから、セレンの還元に関与する遺伝子が取得できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養工学によるメチル化セレン(気化セレン)還元最適化の条件検討を続ける。簡単に精錬した赤色バイオセレンを基質に用いて、pH、温度、攪拌速度などの物理的条件を変化させてセレン気化合成能に与える影響を評価する。また気化能を向上・阻害する化学的因子の特定を行い、回収ユニットの構築を目指す。模擬排水や実廃水を用いたメチル化セレンの回収を目指す。 遺伝子工学によるメチル化セレン(気化セレン)関与候補遺伝子が取得できたので、DNA塩基配列解析、組換え酵素の合成・精製、特徴解析など詳細な解明を行う。NT-I株でのセレン還元メカニズムを調べ、最終的には、セレン回収の向上を目指す。 セレンを先行研究としたレアメタル回収システムの開発を総括する。
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Causes of Carryover |
元素態セレンからメチル化セレン(気化セレン)の最適化条件を検討するために一般化学試薬を計上していたが、量的に少なくても効果が見られた。よって計上していた申請額を全て使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養工学によるメチル化セレン(気化セレン)還元能促進・阻害因子を特定するための試薬の購入を予定している。
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