2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞シート積層化技術を用いた3次元ヒト腹膜組織評価法の確立と新治療法開発への応用
Project/Area Number |
25420839
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
崎山 亮一 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30408471)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腹膜透析 / 溶質透過係数 / 腹膜組織モデル / 化学工学 / 組織工学 / 再生医療 |
Research Abstract |
腹膜透析(PD)は低コストでQOLの高い腎不全治療法であるが、PDによる腹膜の劣化が懸念され、ある程度(5年を目安)で血液透析に移行する。腹膜状態を把握することはPD を「いつまでつづけるか」の判断となり、安心したPD治療が提供できる。本研究の目的は、in vitroで腹膜組織を構築し、その機能評価系を確立し、新治療法を開発することである。2013年度は以下の2項目を行なった。まず、溶質透過の抵抗として考えられる腹膜の組織を構成する細胞として、血管内皮モデルではヒト血管内皮細胞株、間質層モデルではヒト線維芽細胞株、中皮層モデルではヒト中皮細胞株をそれぞれ培養した。腹膜透析液に含まれる傷害因子であるメチログリオキサール(MGO)を添加することで、培養した中皮層モデル、血管内皮層モデルそれぞれにMGO傷害を与えた結果、MGO濃度が1uM以上でミトコンドリア活性が濃度依存的に低下することがわかった。MGO傷害1uM、3uMを加えた各モデルにおいて、蛍光ラベルしたデキストランを用いて溶質透過実験を行なった結果、MGO傷害濃度が大きい程、溶質透過係数が大きく、溶質透過亢進が起こっていることがわかった。次に、温度感受性培養皿と積層化技術を用いて中皮細胞シートと線維芽細胞シートを作製し、培養皿上でコンフルエントに達した血管内皮細胞に順次重ねていくことで、上部から中皮細胞―線維芽細胞―血管内皮細胞の3層組織を有する腹膜組織モデルの構築に成功した。以上の結果は、腹膜透析液含有のMGOは腹膜組織に傷害を与えること。さらに、腹膜組織モデルの構築は、in vitroでの腹膜機能評価法の確立を示唆している。これらの結果は、今後 PD治療における新評価法としての基盤となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中皮細胞―線維芽細胞―血管内皮細胞の3層組織を有する腹膜組織モデルを構築した。しかしながら、このモデルでは溶質透過係数を実験により算出することはできず、温度感受性培養皿からトランスウェルに移す必要がある。3層の細胞組織を構築後、トランスウェルに移す過程で、隙間無く移すことに時間を要している。ここが、この研究の第一のブレイクスルーであるため、慎重に検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞をトランスウェル表面で培養しコンフルエントの状態とする。これと平行して、中皮細胞―線維芽細胞の2層の細胞組織を構築後、パンチにてトランスウェル面積よりもわずかに大きな円の形をした2層の細胞組織を作製する。2層の細胞組織をトランスウェルに移すことで、トランスウェル培養面積を隙間無く細胞で埋める予定である。これにより、3層から構築される腹膜組織の膜間抵抗値と溶質透過係数が算出可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vitro での腹膜組織の構築に時間を要した。しかしながら、中皮細胞の培地、線維芽細胞の培地、血管内皮細胞の培地のストックがあったため、その消費を優先した。そのため、培地購入費用が少なくなった。 培地の購入、ならびに積層化装置の購入にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)