2015 Fiscal Year Research-status Report
複合リポソームを用いたがんワクチンの創製に関する研究
Project/Area Number |
25420842
|
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
後藤 浩一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30279377)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上岡 龍一 崇城大学, 生物生命学部, 研究員 (70099076)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | がん / ワクチン / リポソーム / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベシクル分子DMPCとミセル分子Tween 80からなる複合リポソーム(ハイブリッドリポソーム、HL)に、がん抗原となるヒトムチンMUC-1の合成ペプチド抗原と、T 細胞の活性化副シグナル分子であるマウスmB7-1(CD80)リガンドの組換えタンパクを組み込んだリポソームワクチン(HL-MUC-1/mB7-1)を調製した。動的光散乱法による粒径測定より、HL-MUC-1/mB7-1は、直径約100 nmの大きさであり、サイズの分布が小さく、さらに、4℃で保存することにより、約一ヶ月間安定であることが明らかになった。HL-MUC-1/mB7-1のがんワクチンとしての機能評価として、細胞傷害性T細胞(CTL)の特異的誘導効果を検討するために、マウスを用いた実験を行った。まず、C3H/HeマウスにPBS(-)(コントロール)、HLおよびHL-MUC-1/mB7-1を1週間間隔で5回尾静脈投与を行った。この投与期間中、マウスに大きな体重変化は見られなかった。最終投与後11日目に脾臓を摘出し、CD8+ T細胞を分離・回収した。一方、ヒトMUC-1を発現しているマウス乳がん由来MM46-APR-MuC1 cl.1細胞を蛍光剤で染色した後、CD8+ T細胞と共培養した。MM46-APR-MuC1 cl.1細胞に対するCD8+ T細胞の傷害活性を蛍光剤のリリース量から評価したところ、HL-MUC-1/mB7-1を投与したマウスのCD8+ T細胞において細胞傷害活性が高くなる傾向が観測され、HL-MUC-1/mB7-1によるCTL誘導の可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、平成25年度から平成27年度の3年間の研究期間を想定していたが、申請時に予定していなかった研究代表者の長期海外研修が平成26年度(平成26年4月1日~平成27年3月30日)にあり、研究計画に遅延が生じた。本年度は、平成25年度の研究において得られたマウスmB7-1組換え膜タンパクとヒトムチンMUC-1の合成ペプチドを用いてリポソームワクチンHL-MUC-1/mB7-1を調製し、ワクチン接種マウスから回収したCD8+ T細胞を用いた実験系で免疫賦活効果(細胞傷害性T細胞の活性化)が示唆されているが、本研究課題の目標であるin vivoでの免疫賦活効果を実証するまでには至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、研究計画に遅延が生じたため、1年の科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長の申請を行い、承認されている(平成28年3月22日付)。そこで、平成28年度において、リポソームワクチンのin vivo系での免疫賦活効果を検証する。動物治療実験として、リポソームワクチンHL-MUC-1/mB7-1をマウスに接種後、MUC-1を発現しているがん細胞を移植し、マウスの生存日数や腫瘍組織の剖検の結果から生体レベルでの免疫誘導効果を評価する。また、リポソームワクチンを接種したマウスのリンパ細胞や血液を採取して細胞のサブセットやサイトカイン産生パターンを観測し、リポソームワクチンによって誘導される腫瘍免疫の発現機構を解析する。
|
Causes of Carryover |
本研究課題では、申請時に予定していなかった研究代表者の長期海外研修が平成26年度にあり、研究計画に遅延が生じた。平成27年度の研究では、リポソームワクチンHL-MUC-1/mB7-1を接種したマウスのCD8+ T細胞を用いた実験を実施したが、計画の遅延のため、in vivoでの免疫賦活効果を実証する実験は行っておらず、主にこの実験に用いる消耗品の購入予定費が次年度使用額となっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度において、リポソームワクチンのin vivo系での免疫賦活効果を検証するために、動物実験の消耗品(試薬、器具、マウス、細胞)を購入する予算に使用する。また、得られた研究成果を学会発表するための費用(参加費、交通費、宿泊費)に使用する。
|