2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420858
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
奥泉 信克 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (10321564)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膜面構造 / 波板状断面 / 固有振動数 / 固有値解析 / 加振実験 |
Research Abstract |
今年度は,数種類の蛇腹折り断面や波状断面を有する矩形膜について,有限要素法による固有値解析,対応する実験モデルの加振実験による共振点計測,および強度・剛性の解析法の検討を実施した. まず,蛇腹折りおよび波状の断面を有する様々な矩形膜に対し,重力の影響を考慮して有限要素法による固有値解析を行い,膜面全体が面外変形する代表的な振動モードに着目して,断面形状の違いによる固有振動数の変化を検討した.その結果,予想通り蛇腹折りや波打ちの振幅が大きいほど固有振動数は向上するが,無数の面内・面外振動モードが存在し,振幅が過大になると膜面全体の面外変形モードが解析範囲内に現れなくなる場合があることなどが確認された.また,既存の真空チャンバと小型加振機で実施する加振実験に適した矩形膜の大きさと境界条件,蛇腹折りと波打ちの周期と高さを検討し,膜面固定用治具などを設計,製作した. 次に,膜厚15ミクロンのポリイミドフィルムを用い,大きさ約200mm×200mm,周期20mm,振幅約1~3mmの蛇腹折り断面および波状断面の矩形膜を水平に小型加振機に固定し,真空チャンバ内で面外加振実験を実施した.加振振幅と掃引周波数範囲を変更しながら掃引正弦波加振を行い,膜面中心部の変位をレーザー変位計で計測し,共振点を取得できることを確認した.しかし,計測結果は固有値解析結果と大きく異なっており.膜面両端を固定する治具の位置や角度の微妙なずれ,蛇腹折り断面の場合には塑性変形させる折り山の角度や位置の不正確さなどによって,膜面に歪みや初期応力が発生してしまうことが影響していると考えられる. 解析法については,波板や補強板を異方性平板に置き換えた等価曲げ剛性の計算法や圧力を受ける波板の屈服座屈強度の計算法を調査,検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験による蛇腹折りや波状断面の膜構造の剛性や強度の評価については,用意した加振実験装置により面外振動の共振点が計測可能なことは確認できた.しかし,今年度製作した治具では蛇腹折りや波状の断面形状を膜面に正確に与えることが予想以上に困難だったため,正確な計測ができていない.また,真空チャンバ内に設置した加振機用の加速度制御機が,制御用加速度センサのノイズのため十分に機能しないため,入力と応答の大きさの関係を定量的に求めるのに工夫を要し,非線形性の評価ができていない. 曲げ剛性や座屈強度の解析については,汎用非線形有限要素法ソフトにより,様々な断面形状について重力を考慮した固有値解析を行い,固有振動モードを解析,比較できた.しかし,理論解析による曲げ剛性や固有振動モードの検討については,手法の調査や検討に時間を要し,具体的な解析は実施中である.加振実験と固有値解析や理論解析の定量的な比較,曲げ剛性の非線形性や面外荷重に対する座屈強度の検討は実施できていない. また,本研究で使用している真空チャンバや実験室が他の研究と共用となったこと,チャンバの真空度が悪化しておりその対策を検討する必要があったことなどから,実験に十分な時間をかけることができなかったことも遅延の原因である.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は,まず25年度に引き続き,蛇腹折りや波状の断面形状の膜面の曲げ剛性と面外荷重に対する強度に関する研究を行う.実験では,膜面を固定する治具の位置や角度の精度を向上するため,膜面全体を拘束する治具を製作し,蛇腹折りの角度や位置を正確に管理するための治具も製作する.また,真空槽内の加振機の入力加速度を正確に計測するための計測機器などを追加する必要がある.それらを用いて供試体を再製作して加振実験を行い,共振点とその振幅依存性を計測する. さらに,既存の微小荷重引っ張り試験装置を改良し,蛇腹折りや波状断面の膜面の曲げ剛性の実測を試みる.解析では,異方性平板としての等価曲げ剛性や,面外荷重に対するたわみや座屈強度を計算する.また,汎用非線形FEMソフトでも面外荷重に対する変形解析を行い,座屈強度を評価する.次に,放射状に折り癖や波状の変形を与えた円形膜の回転加振実験を行い,過去に実施した平坦な円形膜の回転加振実験結果と比較して,剛性向上効果や座屈強度を評価する. その後, 当初計画したように,折り畳み可能な薄肉部材の貼付による矩形膜や円形膜の剛性向上効果を有限要素解析や小型モデルの加振実験と,可能なら曲げ剛性の実測によって評価する.また,適当な膜構造について,変形モードや折り畳み収納を考慮した効率的な薄肉貼付部材の配置を検討したい. なお,実験で使用している既存の真空チャンバの到達可能な真空度が約200Paと悪化しており,計測に影響している可能性があるため,真空チャンバとポンプの保守を早期に実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画していた真空槽内における膜面加振実験に必要となる,膜面を蛇腹折りや波状断面で加振機に固定するための治具類の製作が予想以上に難しかったこと,今年度製作した治具では,正確な断面形状を与えて歪みなく膜面を固定することができず,蛇腹折りの膜面に正確な角度や位置で折り癖を形成することができなかったことから,次年度改めて固定治具や折り癖形成治具等を設計,製作することにした.それに伴って,次年度に予定していたワークステーションの購入を前倒しした. 膜面加振実験装置の改良や追加製作,必要な機器の購入を行う.具体的には,膜面に蛇腹折りや波状の断面形状を正確に与えて固定するための治具と,蛇腹折り膜面を作るために正確な折り山の角度と位置で折り癖を形成する治具を設計,製作する.実験で使用している真空対応小型加振機の加振加速度を正確に計測・制御するために必要な機器の導入や改修を行う.回転円形膜面の加振実験で使用する既存の回転加振装置の改修を行う.また,既存の微小荷重引っ張り試験装置を改良し,微小荷重の曲げ剛性計測装置を製作する. 予算的に可能であれば,既存の他の真空チャンバの改修または新規のチャンバの製作により,本研究で独占的に使用可能な真空チャンバを導入する.
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