2014 Fiscal Year Research-status Report
不純物の状態制御による低放射化バナジウム合金の低温照射脆化抑制
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25420889
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
室賀 健夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60174322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バナジウム合金 / イオン照射 / 中性子照射 / 転位ループ / 照射相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、製作材料に関するイオン照射試験を実施した。V-4Cr-4Ti合金およびV-4Cr-4Ti-Y合金について、100℃、200℃、300℃で2.4MeVの銅イオンをピークで約1.0dpaまで照射し、電子顕微鏡組織観察を行った。合わせて、BR2炉照射によるV-4Cr-4Ti合金の90℃0.2dpa, 290℃ 0.2dpa 中性子照射を行い、組織の比較を行った。これらを以前に行った超高圧電子顕微鏡を用いた電子線照射によるV-Ti, V-Ti-Si合金の組織温度依存性の結果と比較した。 イオン照射組織においてY添加材と非添加材で有意な差は認められなかった。これは、この温度領域はTiが移動し酸化物析出を形成する温度以下なので、Yによる酸素捕獲効果も顕著でなかったと考えられる。 一方、V-4Cr-4Ti合金の照射組織は、微小な転位ループからなるもので、その密度の温度依存性は、200℃以下でほとんどなく、200℃以上で温度と共に急激に減少する傾向を示した。これは電子線照射による転位ループ密度の温度依存性と同じ傾向であり、速度論モデルで説明できる。また転位ループ密度を照射速度(dpa/sec)で整理すると、低温領域では照射速度依存性がなく、高温領域では照射速度の1/2乗に近い割合で密度が変化する。これらは電子線照射とイオン照射について当てはまるが、中性子照射では、さらに高い転位ループ密度となった。 照射試料に高分解能FE-TEMによりエネルギー分散型X線分光分析を行ったところ、300℃ 1dpaのイオン照射では転位ループ位置で特に組成の変化は見られなかったが、中性子照射では、90℃ 0.2dpaですでにループ位置にTiと酸素の濃化が認められた。このことから、転位ループの核がTiと酸素の析出により安定化することで、中性子照射では転位ループの密度が高くなったと解釈される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、照射効果に及ぼす不純物制御の影響を明らかにすることを目指していた。照射の機会に制限があり、Y添加材と非添加材の系統的な比較には至っていないが、一方イオン照射と中性子照射の比較が可能になり、不純物の偏析効果の違いが明らかになったのは、当初予想を上回る成果と言える。この結果はイオン照射による中性子照射予測に対して重要な課題を示すものである。これらを合わせると、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の研究成果は、イオン照射により中性子照射効果を予測する上で重要な問題を提起している。すなわちイオン照射では短時間で急激に損傷を導入するため、動きやすい格子間原子の移動と集合で組織が形成されるが、中性子照射の場合は、長時間でゆっくりと損傷が導入されるため、溶質原子(この場合Ti)の偏析、及び不純物(この場合酸素)との反応が進行し、それが格子間原子の集合体形成に影響を与えることを示している。すなわち、不純物の効果、溶質原子の偏析などは中性子照射の方が顕著に表れる可能性が示され、イオン照射-中性子照射相関における課題が明らかになった。この点は、モデリングにより、より明確に問題点を示す必要がある。 これまでの研究により、比較的低温での不純物の制御性、不純物制御の照射効果への影響を明らかにしてきた。一方、バナジウム合金の高温強度の向上という課題にも合わせて取り組む必要があり、27年度は、V-4Cr-4Tiの改良による更なる高温強度の向上とそれに及ぼす不純物の効果を明らかにし、低温領域を含む全使用温度領域における不純物の挙動とその材料特性への効果についての系統的な知見を得る予定である。具体的には高温強度を一層向上させる高Cr化、VのTaへの一部置換を試みる。最終年度であり、これまで製作した合金、不純物制御、強度試験、照射試験全体を総括し、バナジウム合金の特性、将来性、高度化の指針を明確にしたい。
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Causes of Carryover |
バナジウム合金の加工費を、分割せずに一度に行うことにより節約が可能になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験試料の加工数を増やすことにより、より系統的な試験を行う予定である。
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