2013 Fiscal Year Research-status Report
高度な環境安全性を備えるDTトカマク炉の新概念構築に関する研究
Project/Area Number |
25420898
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
飛田 健次 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 研究主席 (50354569)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 核融合炉 / 安全性 / 閉じ込め障壁 / 冷却材喪失事故 |
Research Abstract |
平成25年度は、まず、核融合炉の安全性研究の指標となるトリチウム環境影響を評価した。これは、核融合プラントから放出されたトリチウム量とプラント敷地境界における公衆被ばく(mSv)を関係づけるもので、トリチウムの放出高さや気象条件(風速、大気の乱れ、湿度等)によって幅はあるものの、トリチウム放出量が100gの場合に公衆被ばくは概略10 mSvになることを明らかにした。同時に、安全解析の対象となる核融合炉を基本パラメータを検討し、2050年頃に想定しうる核融合出力1.35 GW、加圧水冷却(15.5 MPa, 290-325℃)、主半径8m程度の核融合炉とした。 核融合炉の安全確保の大原則は、トリチウムやダストなどの可動性放射性物質を閉じ込め障壁内部に保持し、環境放出を防止ないしは抑制することである。核融合動力炉において閉じ込め障壁の健全性を脅かす主な要因は、冷却材のエンタルピー、炉内機器の崩壊熱である。初年度はこれらプラント内在エネルギー(当該年度は、冷却水のエンタルピーと炉内機器の放射化による残留熱)に対する閉じ込め障壁の健全性確保の難易度の理解するための初期解析を行った。真空容器外における冷却水マニホールド配管の大破断を仮想した冷却材喪失事故解析では、破断後瞬時に建屋の内圧上限に達し、ブローアウトパネル開放により放出蒸気の一部を環境放出しなければならないという結果を得た。また、第一閉じ込め障壁となる真空容器内で生ずる冷却水喪失事故では、最悪の場合でも冷却水破断口面積の総和が約0.06㎡未満となるような設計方策をとれば真空容器の健全性を担保できることを明らかにした。また、冷却材全量喪失が生じた場合の崩壊熱による炉内機器温度の上昇を解析した結果、第一閉じ込め障壁となる真空容器の温度は800℃を超えることはなく、溶融により障壁が破損する可能性はないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、高度な安全性を備えた核融合炉概念を構築することであるが、本研究では次の二つのアプローチを試みた。(1)核融合炉固有あるいは既存の事故防止・影響緩和系の機能を正確に理解しその効果を定量的に理解すること、(2)従来の核融合炉では考慮していなかった新しい事故防止・影響緩和系を提言し、その機能を確認すること、である。 平成25年度に実施した冷却水全量喪失時の炉内機器の温度解析は(1)の一例であり、この解析を通して、熱出力が1.6 GW程度の場合、第一閉じ込め障壁となる真空容器の温度は800℃を超えることはなく、溶融により障壁が破損する可能性はないことを確認した。これは、炉心周りには核発熱密度の高い機器が存在するが、その周囲に存在する膨大な量の構造物がヒートシンクとして働くという核融合炉固有の安全性を示した成果である。また、真空容器外で冷却水配管に大破断が生じた場合には、建屋内圧が急峻に高まるためブルーアウトパネルの開放を余儀なくされるが放出される冷却水(トリチウムや放射性腐食生成物を含む)のうち大部分は建屋内に残るので、事故が収束した時点でブルーアウトパネル開口部を緊急用の閉止板で閉じることによってトリチウム水の環境放出を抑制できることが分かった。これは(2)に相当する新しい影響緩和方策といえる。 このように、本研究は初年度から核融合炉の安全性に関する重要な知見が得られており、当初計画以上に順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、安全性解析の困難を避けるため核融合炉周りの単純化し、真空容器外の閉じ込め障壁を単純な1区画としていた。実際には、真空容器にはポートを介して熱処理系、燃料注入系、電流駆動装置、排気系、計測系、燃料回収系などが接続されており、これらの付帯設備との取り合い部を含めて適切な閉じ込め障壁を設定する必要がある。 平成26年度は、これらに留意して容器内冷却水喪失事象(容器内LOCA)及び容器外LOCA を評価し、核融合原型炉に望まれる閉じ込め障壁の設計指針を提言する。また、これらの熱水力に関連する事故事象に加えて、バルブや真空窓の破損によって真空容器(第一閉じ込め障壁)が開放される真空喪失事象(LOVA)の安全解析を行う。この事象では、空気侵入に置換流によって放射性ダストやトリチウムが炉本体建屋内に放出され、それらのうちフィルターやADS(大気中トリチウム除去系)で回収されないものは環境放出される。放射性ダストの環境放出影響(すなわち、放出量と公衆被ばくmSvの換算)についても解析コードを導入して評価し、LOVAによる事故影響の評価に資する。 最終年度(平成27年度)には、炉内LOVAに伴う、水蒸気と中性子増倍材として利用するベリリウム・チタン(Be12Ti)の化学反応による水素発生量を解析し、水素爆発リスクを評価し、必要に応じて事故防止策を提案する。さらに、3年間の安全性研究を総括し、安全性の高い核融合炉原型炉を実現するための指針をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に情報収集のための外国出張を計画していたが、所属機関の業務の都合で実施できなかった。また、安全性解析に必要となるモデル作成のためのCAD作業の人件費を計上していたが、研究代表者及び連携研究者が実施したため次年度への繰越金が生じた。 繰越金は、核融合炉の安全性およびその解析に関連するプラント関連図書の購入、および安全性解析に関連するソフトウェア並びにデータ保存のための機器(ハードディスク)の購入に充てる計画である。
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Research Products
(4 results)