2015 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉システム安全の高度化に必要な材料照射相関則と材料挙動予測
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25420907
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森下 和功 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (80282581)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マルチスケールモデリング / 照射損傷 / 照射相関 / 確率論的リスク評価 / 保全の最適化 / 原子力保全 / 核融合材料設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
軽水炉保全や核融合炉材料開発においては、照射下で使われる材料の劣化挙動を事前に把握することが重要になる.材料劣化の予測には、現在、イオン加速器や材料試験炉等の代替照射場を使った「加速試験」が行われているが、こうした照射試験の結果から、いかに必要としている照射環境下での材料挙動を正しく予測するか。材料照射相関則構築の問題は、さまざまな時間・空間スケールの現象を内包するマルチスケールな物理の解明であるとともに、原子炉・核融合炉の安全という現実的工学的問題でもある。これを解明するには、照射場の定量化、材料照射プロセスのモデルと理論、実験検証が必須となる。本年度は、以下の成果を得た。 (1)軽水炉圧力容器鋼の照射脆化を対象に、主要な脆化種とされる銅クラスターの形成プロセスのマルチスケールモデリングを行い、脆化の照射環境依存性(照射フラックス依存性、温度依存性)を導出した。従来、理論的取り扱いがあいまいであったクラスターの核生成現象については、クラスターの分子動力学解析から得られたエネルギー論と核発生のモンテカルロシミュレーションを組み合わせて実施した。 (2)その結果、照射フラックス(dpa/s)が低いほど、dpaあたりの核発生率は高くなり、またクラスター(より正確には、銅-空孔集合体)中の銅割合は高くなることがわかった。これは既存の実験事実と整合し、ボイドや転位ループで見られるdpa/s依存性(計算値)とは逆になる。その理論的考察も行った。 (3)機械システムの安全の議論で使われる確率論的リスク評価(マクロ)の概念を圧力容器鋼照射脆化管理(ミクロ)に応用し、脆化管理の最適化を議論した。リスクの観点からすれば、圧力容器鋼の照射脆化のサーベイランス試験は、運転開始後30~40年以降に実施すべきであるとの知見を得た(現在は数年~10年程度の間隔で行われている)。
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