2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420911
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
余語 覚文 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (50421441)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レーザーイオン加速 / 高強度レーザー |
Research Abstract |
本研究においては、使用する高強度レーザー装置の性能が実験の成否に大きく影響する。そこで、平成25年度においては、提案者を中心として、原子力機構の保有する10TWレーザー装置:JLITE-Xのパルス時間波形に関する性能を向上させる取り組みを実施した。 既存のシングルCPAシステムに対して、可飽和吸収体を備えたダブルCPA化モジュールを組み込むことで、レーザー背景光の集光強度コントラストを3桁向上することに成功し、主パルス前500 psにおいて10の9乗のコントラストが得られた。主パルスのピーク強度は約10の18乗 W/平方cmであるので、背景光は10の9乗 W/平方cmに抑制されていることになる。これは一般的なプラズマ化しきい値10の10乗-10の12乗 W/平方cmより十分に低い値であるため、プリプラズマの無い状態での高強度レーザー‐物質相互作用を実現することができる。この高コントラストレーザーパルスを、厚さ100 nmの極薄膜に集光したところ、エネルギー250 mJ on targetのレーザーで約2 MeVの陽子加速に成功した。また、レーザーの偏光方向をp偏光からs偏光へ回転させると、回転角のcos関数に依存して陽子のエネルギーが減少するなど、急峻な密度勾配を持つ薄膜表面と高強度レーザーの相互作用に特徴的な現象を捉えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、安定かつ高エネルギーの陽子加速に必要となるレーザー装置のパルス時間波形に関する性能向上に成功したことは、研究計画を遂行する上で重要な成果である。また、レーザー装置の開発のみならず、そのレーザー装置を実際に運用し、陽子加速を1カ月以上にわたり安定的に実施できたことは、今後のスピン計測実験に対してきわめて有用な結果である。以上の成果については、査読付原著論文1件(A. Yogo et al., Optics Express 22, 2060-2069 (2014).)、国際会議における発表1件(IFSA 2013, Sept. 8-13, 2013, Nara, Japan)、国内学会における口頭発表2件(レーザー学会、日本物理学会)において発表された。 また、レーザー加速陽子スピン計測装置の開発に関しては、装置の基本設計をすでに開始している。当初の散乱角度分布からスピンを計測する機能に加えて、装置コンポーネントを入れ替えることにより、イオンのエネルギー・q/m分布を測定できるトムソンパラボラの機能を持たせる着想を得て、より汎用的な装置となるよう工夫している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の途中(3月)において、申請者は大阪大学レーザーエネルギー学研究センターへ異動したが、引き続き原子力機構に設置された前述の10TWレーザー装置を使用して共同実験を行う予定である。また、これを機に、レーザーエネルギー学研究センターの保有する大型レーザー(LFEX)を用いた実験を実施すべく計画中である。] LFEXレーザーは、大強度エネルギーによる照射が可能であるため、スピン偏極の評価に必要な陽子数をレーザー1ショットで得ることができる。従来の研究計画では、これより小型のレーザー装置を用いて、レーザーを繰り返し照射して陽子数を積算することで、統計的に有意な測定を行うことを計画していたため、複数のショット中の平均的な磁場構造を評価することとなっていたが、LFEXレーザーを用いれば、シングルショット下における瞬間の超高強度磁場を反映した結果を得ることができる。 今年度より、本研究課題の主目的であるスピン偏極測定の実験を実施し、大出力レーザー装置の利点を生かした成果を上げたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の途中において、申請者が所属機関を異動したため、研究計画において主要な測定装置であるレーザー駆動陽子スピン測定装置の製作・購入を次年度に変更した。これにより、移動先の実験条件に適した設計による装置の製作・購入が可能となった。 申請者が現在所属する大阪大学レーザーエネルギー学研究センターにおいて、高強度レーザーLFEXを使用した陽子加速実験を実施し、陽子スピンの測定を試みる。繰り越した予算を用いて、上述した陽子スピン測定装置をLFEX照射チェンバー装置に適した設計で製作し、大強度レーザーにより他に類を見ない成果を上げることを目指す。
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[Journal Article] Insertable pulse cleaning module with a saturable absorber pair and a compensating amplifier for high-intensity ultrashort-pulse lasers2014
Author(s)
A. Yogo, K. Kondo, M. Mori, H. Kiriyama, K. Ogura, T. Shimomura, N. Inoue, Y. Fukuda, H. Sakaki, S. Jinno, M. Kanasaki, and P. R. Bolton,
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Journal Title
Optics Express
Volume: 22
Pages: 2060-2069
DOI
Peer Reviewed
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