2013 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症発症機序におけるイノシトール6リン酸キナーゼの役割
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25430014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
永田 栄一郎 東海大学, 医学部, 准教授 (00255457)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / イノシトール6リン酸キナーゼ2 / 脊髄前角細胞 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
変異型SOD1マウス脊髄で生後6週目、12週目、17週目、22週目のイノシトール6リン酸キナーゼ2(IP6K2)の遺伝子発現を同週齢の野生型マウスと比較検討した。野生型マウスは、生後17週目まではIP6K2発現が増加するが、22週目以降は減少した。一方、変異型SOD1マウスでは、生後6週目よりIP6K2の発現が増加し、12週目で発現のピークとなり、以後17週目、22週目と減少した。6週目変異型SOD1マウス脊髄のIP6K2発現は、野生型マウスより多く発現しており、さらに12週目で顕著であった。しかし、17週目、22週目と野生型マウスより発現が低値を示した。変異型SOD1マウス症状は約13週目以降に出現することより、IP6K2発現上昇はALS発症前のマーカーとなる可能性がある。 IP6K2トランスジェニックloxPマウスと運動神経に選択的にCreを発現するマウスと交配を行い、その子孫を得ることができた。F1マウスは15週齢になるが、現在のところ明らかな表現型の変化は示していない。今後週齢を追って観察するのと、組織学的検討を進めていく予定である。 コントロール5例、ALS検体(脊髄)6例の凍結ブロックを用い、IP6K2とTDP-43の免疫組織を検討した。ALSのTDP-43染色では、数例の検体で前角細胞の細胞質に染色された。IP6K2抗体染色では、コントロールの前角細胞の核に強く染色され、ALSでは細胞質に強く染色された。さらにALS前角細胞の細胞質にみられるリポフスチン顆粒様集積物がIP6K2抗体で染色された。IP6K2遺伝子発現状況確認のためにマイクロダイセクション法により前角細胞のみを抽出し、コントロールと比較しながらIP6K2の発現状況を検討している。 髄液IP6K測定は、学外研究協力者の三村博士の研究室で測定しているが、未だ髄液中のIP6、IP7を安定して測定できてない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異型SOD1マウスにおけるIP6K2に関する研究はおおむね順調に成果ができており、現在、論文化に向けてデータを取集している。 運動神経系に特異的に過剰発現するIP6K2コンディショナル・トランスジェニックマウスに関しては、既にF1マウスを獲得しているが、週齢数が若いこともあり、明らかな表現型が認められていないが、今後表現型に関しては、時間経過を追って観察していくので時間を要すると考えられる。 ALS検体の解析に関しては、症例数を集めるのに時間がかかるのと、前角細胞のみを抽出するマイクロダイセクション法は、手技が難しく、時間がかかるので、結果を出すのに時間を要する。 また、髄液中のIP6やIP7の測定に関しては、従来の方法では、微量のために検出できず、新たな方法の開発が必要なために時間を要してしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、運動神経系に特異的に過剰発現するIP6K2コンディショナル・トランスジェニックマウスの匹数を増加させて、大脳や脊髄の解剖学的、組織学的検討を行うとともに、変異マウスに様々なストレス(拘束ストレスや薬剤ストレス)を付加することにより、運動症状が発現するかなどを検討する。さらに、この変異マウス(ホモ型)どうしを交配することにより、IP6K2遺伝子の過剰発現をより強化させる。 包括型脳科学研究推進支援ネットワークより、更なるALS検体を入手して、n数を増やして実験する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス飼育に関する諸費用として、使用予定であったが、当大学のマウス飼育担当している実験動物センターの請求書が3月末日のために、今年度の支払期限に間に合わなかった。 次年度のマウス飼育費として使用予定である。
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Research Products
(3 results)