2013 Fiscal Year Research-status Report
扁桃体中心核におけるシナプス可塑性の可視化とその生理的意義
Project/Area Number |
25430015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡部 文子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00334277)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情動 / 扁桃体 / 中心核 / 可塑性 / 侵害受容 / 記憶・学習 / 痛み |
Research Abstract |
情動は、認知・意欲などの発現に深く関与すると共に、危険な場所や刺激を学習することで、個体の生存維持に重要な役割を担う。痛みなどの無条件刺激 (US) と条件刺激 (CS) との連合学習である情動学習のひとつ、恐怖条件付けには、扁桃体外側核が責任領域として注目されてきた。一方、痛みは扁桃体外包中心核(CeC)に直接入力することが知られ、CeCもCS-US連合の場と捉えられる。我々は今まで、CeCシナプスが慢性痛成立後および情動学習依存的に顕著なシナプス増強を示すことを報告してきた。そこで本研究ではCeCを負情動連合の座と捉え、CeC可塑性制御の分子機構とその生理的役割を明らかにすることを目的としている。 当該年度の研究実績としては、CeCに直接痛みシグナルを入力する中継核である腕傍核を薬理学的に可逆的に抑制すると、情動記憶の形成が有意に減弱することを見出した。これは、腕傍核という原始感覚中継核が恐怖記憶形成などの高次脳機能制御に積極的に関与するという初めての報告である。一方、腕傍核の活動抑制により、熱性、機械性疼痛閾値およびUS侵害受容刺激に対する閾値には顕著な変化が見られなかった。これらの結果は、腕傍核の活動が、情動記憶の獲得に関与することを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、個体レベルでの腕傍核の可逆的抑制実験は概ね順調に進展している。腕傍核へのガイドカニューレ留置手術は、腕傍核近傍に呼吸中枢などあり立ちあげ当初は困難を極め進捗の遅れが見られた。しかしながらその後手術法に様々な試行錯誤を加え、困難な手術も安定して行えるようになった。一方、脳切片を用いた可塑性制御の分子機構への着手もすでに初めており、予備的知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究実績により、腕傍核が情動記憶形成に重要な役割を担うことが示された。そこで今後は、腕傍核からCeCへのシナプス機能制御に焦点を当てる。まず、腕傍核からCeCシナプス可塑性制御の分子機構解明に取り組む。さらに、可視化マウスを用いて活動細胞特異的な可塑性の同定を行う。合わせて、光遺伝学的操作を用いて、腕傍核からCeCへのシナプス入力の負情動制御における意義を個体レベルで明らかにすることを目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス腕傍核におけるガイドカニューレ留置手術法がが当初の目算よりも困難であり、多くの個体、手術用具、関連する消耗品および期間を必要とした。このため、当初購入予定であった電気生理解析用インターフェイスを保留し、マウス手術法の改善に集中した。本手術法は、従来当該分野でよく行われている、海馬や扁桃体など比較的大きな神経核へのガイドカニューレ留置法を参考にスタートした。しかしながら腕傍核は橋にある小さな神経核であり、周辺の骨も安定しないため、安定した留置が困難であった。 本手術法は、従来当該分野でよく行われている、海馬や扁桃体など比較的大きな神経核へのガイドカニューレ留置法を参考にスタートした。しかしながら腕傍核は橋にある小さな神経核であり、周辺の骨も安定しないため、安定した留置が困難である。 そこで、留置角度や止血法など工夫するとともに、ある程度の失敗率を見越して消耗品等を多めに購入する必要がある。一方、インターフェイスは可能であれば購入したいが、なんとか代替品でも続行可能ではある。そこで次年度も現在の方針を継続し、より多く消耗品を準備することで困難を克服したい。なお、ガイド手術実験は現在論文準備中であり、追加実験の可能性に相当する数をB-Aの使用額として計画している。当初の次年度計画である可視化マウスを用いたCeC細胞群同定、およびCeCシナプス可塑性制御の解析も合わせて計画通り行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] On-Site Energy Supply at Synapses through Monocarboxylate Transporters Maintains Excitatory Synaptic Transmission.2014
Author(s)
Nagase, M., Takahashi, Y., Watabe, A.M., Kubo, Y., and Kato, F.
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Journal Title
J. Neurosci.
Volume: 34
Pages: 2605, 2617
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Impaired noradrenaline homeostasis in rats with painful diabetic neuropathy as a target of duloxetine analgesia.2013
Author(s)
Kinoshita, J., Takahashi, Y., Watabe, A.M., Utsunomiya, K., and Kato, F.
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Journal Title
Mol. Pain
Volume: 9
Pages: 1, 14
DOI
Peer Reviewed
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