2013 Fiscal Year Research-status Report
新しい遺伝子導入法を用いた、上丘を中心とした盲視の神経経路の解明
Project/Area Number |
25430023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木下 正治 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60599083)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 盲視 / 神経経路 / マカクザル / ウイルスベクター / 上丘 / 視床枕 / サッケード |
Research Abstract |
平成25年度は、既に片側第一次視覚野を除去されサッケードタスクを訓練済みのマカクザル(盲視モデルサル)1頭を用いて実験を行った。MRI撮像により上丘および視床枕の位置を調べた後、視覚刺激提示中に金属微小電極を用いて上丘の神経活動を記録することで上丘の位置を同定した。さらに上丘に刺入した電極からの微小電流刺激により誘発した順行性の電位応答を、視床枕に刺入した微小電極を用いて記録することにより視床枕の位置を同定した。これらの同定を行った後、まず視床枕に逆行性ベクター(HiRet)を注入し、その後上丘に順行性ベクター(AAV)を微量注入した。HiRetに搭載した破傷風毒素遺伝子の発現にはAAVに搭載した転写制御因子の遺伝子発現、およびドキシサイクリン(Dox)が必要であるため、破傷風毒素は2種類のベクターによる二重感染が起きている細胞でのみ発現し、またこの発現を誘導するにはDoxの投与が必要となる。この二重感染が起こるのは上丘に細胞体があり視床枕へと軸索を伸ばしている細胞であると考えられるので、Doxの投与により上丘から視床枕への神経経路特異的に破傷風毒素が発現し、それによってこの経路の神経伝達のみを遮断することを試みた。 ウイルスベクター注入から2ヶ月以上経過後にドキシサイクリン(Dox)の経口投与を開始し上丘-視床枕経路の選択的神経伝達遮断を試みた。一次視覚野除去による損傷視野に提示した視覚刺激に視線を向けさせる視覚誘導性サッケードタスクをサルに行わせ、Dox投与前と投与中のサッケードタスクに対する成績を記録した。Dox投与前後の成績変化について解析中である(平成25年度末現在)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
盲視モデルサルで実験を行う前に健常なサルを用いた予備的実験を行う予定であったが、既に作成済みの盲視モデルサルを使用する機会を得たため実験を一部前倒しして行った。一方で、ウイルスベクターの感染、発現効率の検証のための実験および解析は進行中である。このように(実験の順序を若干入れ替えたが)全体として本研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の研究計画に沿って実験を行う。具体的には1頭目で得られた結果の解析を行い、十分な遺伝子発現および経路選択的神経伝達遮断効果が確認できた場合、引き続き2頭目の盲視モデルサルを用いて再現性を確認する実験を行う。2頭目で再現性が十分確認できた場合、論文投稿など成果発表を行う。但し1頭目の盲視モデルサルでの導入遺伝子の発現効率が充分でない、もしくは選択的遮断の効果が十分に認められなかった場合には、手法の改善(ベクターの種類変更、注入方法の改善、タスクの再検討など)を行い研究を継続する。
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