2013 Fiscal Year Research-status Report
超小規模回路網を用いた大脳皮質回路の計算論的機能解明
Project/Area Number |
25430028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺前 順之介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50384722)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 局所回路 / 脳 / ネットワーク / 抑制 / ゆらぎ / 不均一性 / ネットワークモチーフ / クラスタ構造 |
Research Abstract |
大脳皮質局所回路網での基礎的な計算原理を解明するための研究を行った.特に,自発発火状態と,そこでの情報処理に回路構造が与える影響を検討する理論研究を行った.これまでの研究により,大脳皮質局所回路網での興奮性後シナプス電位(Excitatory postsynaptic potential, EPSP)の振幅分布が,大脳皮質自発発火活動と,そこでのスパイク情報伝達に重要なことが明らかになっていた.しかし,統計的な振幅分布を超える,さらに詳細な皮質局所化色構造が自発活動と皮質情報処理に与える影響は未解明であったため,両者の関連を明確にする研究を行った.具体的には,局所回路に関して,実験的に報告されているネットワークモチーフ(小規模ネットワーク構造)に着目し,ネットワークモチーフの分布や,それに伴う結合の高次構造を再現する大脳皮質内の微小部分の局所回路モデルを作成し,その挙動を理論解析及び数値計算によって明らかにした.この研究では,微小回路内にクラスタ構造を持つ神経回路が含まれるという仮定が実験と整合的な神経回路ネットワークを実現することを示し,その仮定によって理論上可能となるネットワークを制限して数値計算を実施した.その結果,クラスタ構造の存在によって自発発火状態の発火率に多様性が生じ,複数の異なる発火率の自発状態が多安定状態として実現することを示した.この多安定状態は,神経情報処理上での作業記憶に対応する可能性がある事も指摘した.さらに,回路内の高次構造に着目した研究において,これまで考慮されていなかった抑制性神経細胞における局所回路での抑制性シナプス後電位(Inhibitory postsynaptic potential, IPSP)の振幅分布に着目した研究も行い,IPSP振幅の歪んだ分布によって,自発発火状態が安定化することを発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内,特に大脳皮質の局所回路構造に関して,興奮性細胞群がつくる小規模ネットワーク構造(ネットワークモチーフ)に着目した研究を行い,その構造の有無によって,自発活動のダイナミクスおよびそのアトラクター構造が変化することを解明できた点は計画通りの順調な進展であるといえる.さらに抑制性神経回路の局所回路でのIPSP振幅分布の不均一性に着目した研究も進展しており,特に自発状態の安定性と,noise correlationに関して強い影響をあたえることを明らかに出来た点も,現在論文発表準備中ではあるが順調な計画進展だといえる.noise correlationについては,脳内での注意のメカニズムとの関連から,近年その重要性に注目が集まっており,その観点から神経情報処理機能との関連が明らかにできる可能性があるため,重要な成果だと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず抑制性神経細胞からのIPSP振幅分布の不均一性の自発活動とnoise correlationに関する機能的役割をさらに解明し,論文出版を行う.特に,現在数値実験によって得られているnoise correlationの急速な減弱に関するIPSP不均一性の効果の起源を明確にするために,IPSP不均一性とnoise correlationの関連を取り扱う数理的な理論を構築し,数値実験の検証及び,生理実験等への予測を行う.局所回路におけるネットワークモチーフに関しては,大脳皮質情報処理のモデルとして近年有用性が指摘されているResevoir computation(Liquid state machine)に着目し,結合強度の統計性,クラスタ構造の有無,ネットワークモチーフの有無等の影響を検討する予定である.またそれらの工学的応用についても検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究内容の進展により,研究当初想定していた人件費・謝金の支出が今年度は不要となったため. 当初予定通り,人件費・謝金として使用する予定であるが,次年度の研究内容の進展に応じては,局所神経回路構造のさらなる数値計算が必要になる事も考えられるため,その場合には数値計算用計算機の購入のために,物品費の一部として使用することも視野に入れて計画する.
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Research Products
(17 results)