2013 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達分子HMGBを用いた成体神経新生の制御と活性評価法の確立
Project/Area Number |
25430039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
井村 徹也 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00405276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 神経新生 / 神経再生 |
Research Abstract |
海馬歯状回における成体神経新生においては、幹細胞ニッチェを構成する多細胞間の相互作用により細胞死と細胞新生がバランスされて調整されおり、その機構の破綻は老化やストレス侵襲における神経新生の変化に関わると考えられる。本研究では、この細胞間コミュニケーションに関わる分子として高移動度ボックス蛋白質(HMGB )ファミリーに着目し、神経新生におけるその役割の解明ならびにその発現・機能調節による幹細胞能制御を試みるとともに、成体神経新生の活性及びその異常の指標となるマーカー分子としての可能性をヒトへの発展を含めて探索することを目的とする。 平成25年度には、HMGB ファミリー分子の脳における時空間的な発現の詳細な解析を行なうとともに、その機能制御の可能なモデルの構築を行なった。HMGBファミリー分子の中で、HMGB1はマウス成体脳内でユビキタスに広く発現していたが、HMGB2は幹細胞ニッチェ領域に選択的に発現し、神経新生の活性に相関して変動していた。HMGB3は低発現で幹細胞ニッチェ領域特異性はみられなかった。HMGB2は分裂しているNestin陽性の神経幹細胞からAscl1陽性前駆細胞で高発現を示し、成熟ニューロンへと分化する過程で発現が低下するという挙動を示した。次に、HMGB ファミリー分子の機能制御を目的とし、レンチウイルスベクターを用いた発現抑制系・過剰発現系の確立及びHMGB2ノックアウトマウスの確立を行なった。予備的な結果からは、HMGB2の発現量と幹細胞数とにはアポトーシスの調節を介した正の相関がみられることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度以降の研究の基礎となる幹細胞ニッチェ領域でのHMGBファミリーの発現の検討は概ね完了している。HMGBファミリーの機能解析を目的とした発現制御モデル確立に関しては、一部の動物モデルの入手が繁殖等の問題で当初計画より若干遅延しているが、代替法としてウイルスベクターを用いたin vivo遺伝子導入法が順調に確立できており、今後の研究計画に大きな支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように一部の動物モデルの入手の遅延はあるが、確立した代替法を併用していくことで、当初計画の達成に問題がないだけでなく、他分子との相互作用の解析等においてより有用な知見を得ることが期待できる。ヒト検体の解析については、動物モデルでの結果を踏まえたうえで福島県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て、充分なインフォームドコンセントを行った症例のヒト剖検脳組織・髄液検体について、個人情報の保護に充分な配慮を払い研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に予定していた一部の動物モデルの導入が繁殖等の問題のため遅延したため。 本年度に予定していた一部の動物モデルの導入ならびに解析を行なうとともに、その結果に応じて必要であれば代替えモデルの開発・確立を行なう。
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