2013 Fiscal Year Research-status Report
小脳プルキンエ細胞におけるリアノジン受容体を介した樹状突起形成制御機構の解明
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25430040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田中 正彦 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60267953)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リアノジン受容体 / カルシウム / プルキンエ細胞 / 樹状突起 / 小脳 / siRNA / 単一細胞エレクトロポレーション / 顆粒細胞 |
Research Abstract |
小脳のプルキンエ細胞で発現するリアノジン受容体1型 (RyR1) 及び2型 (RyR2) が樹状突起形成に果たす役割を明らかにするために、培養プルキンエ細胞に対してRyR1及びRyR2のsiRNAを単一細胞エレクトロポレーションという独自の手法を用いて導入し、樹状突起形成への影響を調べた。RyR1のsiRNA導入によって樹状突起形成が抑制されたのに対して、RyR2のsiRNA導入による影響は見られなかった。RyR1とRyR2のsiRNAを同時に導入しても、RyR1 siRNA単独導入の効果を強めることはなかった。これらの効果は、別の配列のsiRNAによっても再現されることを確認した。プルキンエ細胞におけるリアノジン受容体の発現量はRyR1が強く、RyR2が弱いことを考えると、プルキンエ細胞の樹状突起形成にRyR1が大きな役割を果たしていると考えられる。また、リアノジン受容体抑制条件下において、グルタミン酸刺激に対するプルキンエ細胞内カルシウム濃度上昇が抑制されることも確認した。 一方で、プルキンエ細胞に入力する顆粒細胞ではRyR2が強く発現しているため、顆粒細胞で発現するRyR2がプルキンエ細胞樹状突起形成に果たす役割についても解析した。培養小脳細胞中の顆粒細胞に対してRyR2のsiRNAを導入すると、プルキンエ細胞の樹状突起形成が抑制された。リアノジン受容体抑制条件下では培養液中への脳由来神経栄養因子 (BDNF) の分泌が減少するとともに、この条件下で培養液中にBDNFを添加するとプルキンエ細胞の樹状突起形成が回復した。リアノジン受容体抑制条件下において、グルタミン酸刺激に対する顆粒細胞内カルシウム濃度上昇も抑制されることを確認した。これらの結果から、顆粒細胞で発現するRyR2もBDNFの分泌促進を通してプルキンエ細胞の樹状突起形成を促進する役割を果たすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一細胞エレクトロポレーションを用いたsiRNA導入という独自の手法を生かして、プルキンエ細胞で発現するリアノジン受容体の樹状突起形成への関与について、サブタイプ(RyR1及びRyR2)別に明らかにすることができた。また、顆粒細胞で発現するRyR2の関与についても明らかにすることができた。当初平成25年度に行う予定であったIP3受容体の関与の検討については進展が少なく明確な結果が得られなかったが、これは当初平成26年度に行う予定であった顆粒細胞で発現するRyR2の関与の検討を前倒しして優先的に進めたためである。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.リアノジン受容体と同じく細胞内カルシウム放出チャネルであるIP3受容体について、ノックアウトマウスを用いた研究ではプルキンエ細胞で発現するIP3受容体は樹状突起形成に関与しないことが報告されているが、単一細胞エレクトロポレーションを用いてsiRNAを導入する我々の実験系においても同様の結果になるのかどうかを確認する。 2.リアノジン受容体の下流で活性化し樹状突起形成に影響することが予想されるシグナル分子(カルシウム依存的に活性化する蛋白質リン酸化・脱リン酸化酵素及びそれらの調節因子)について、そのsiRNAを単一細胞エレクトロポレーションを用いて導入し、樹状突起形成への影響を調べる。 3.顆粒細胞からRyR2依存的に分泌されてプルキンエ細胞の樹状突起形成を促進する因子としてBDNFが同定されたが、BDNFだけでは顆粒細胞由来の効果を説明しきれないことも判明しているため、それ以外の顆粒細胞由来因子について探索する。 4.プルキンエ細胞の樹状突起形成過程では、新たな突起が伸びるだけでなく、一旦伸びた突起が退縮するという現象も起こる。リアノジン受容体やその下流シグナルを抑制した場合に伸長と退縮がどう変化するのかを、生細胞のライブイメージングによって解析する。 5.単一細胞エレクトロポレーションによってプルキンエ細胞に発現プラスミドを導入して遺伝子の強制発現を行う実験系を構築し応用する可能性を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に掲載が確定した論文 (Dev. Neurobiol. 74: 467-480, 2014) のカラー印刷代及び別刷代を当該年度の直接経費で支払う予定であったが、出版社からの支払い請求が予想より遅く、年度内に支払うことができなくなったため。 次年度に出版社から支払い請求がなされたら、この経費を使用して支払いを行う。
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