2013 Fiscal Year Research-status Report
社会的ストレスが引き起こす呼吸循環反応の脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
25430043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
堀内 城司 東洋大学, 理工学部, 教授 (40181523)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ストレス / 血圧 / 心拍数 / 視床下部背内側野 / 視床下部傍脳弓領域 / 中脳中心灰白質 |
Research Abstract |
申請計画では、今年度は社会的敗北ストレスの脳内ネットワークの解明を行なう予定であったが、「現在までの達成度」の項目で述べるように実験動物の使用に問題が起きたため、社会的ストレス刺激が比較的簡単に作成できる次年度の計画である住環境ストレス(ホームケージ交換ストレス)を前倒しで行なうとともに、スタッフの実験手技の習熟を行なった。 血圧、心拍数、および行動量をモニターするテレメトリープローブをあらかじめ埋め込んだ2匹1組のラットを別々のケージで2週間飼育した後に、それぞれのケージを交換し、60分間放置した。移されたラットは、ケージ交換直後から探査行動を開始し、落ち着かない様子でケージ内を60分間動き回った。その際、心拍数は約21beats/min、血圧は約13mmHg、移動前の状態から増加した。また、1匹のラットはホームケージ内でケージ交換ストレスと同じスケジュールで取り扱い対照動物としたが、行動に伴う血圧や心拍数の変動以外の特徴的な変化は認めなかった。 それぞれの脳を薄切し、神経興奮性マーカーであるc-fosタンパクの免疫染色行なった結果、視床下部・背内側核(DMH)と傍脳弓領域(PeF)、中脳中心灰白質(PAG)、延髄縫線核(MR)と腹側野(RVL)に、対照と比して、c-fosタンパクのわずかな発現増加が認められた。 先行研究によって、この領域に分布するニューロンへの化学刺激は、ストレス様自律神経反応を示すことが明らかになっており、ケージ交換はラットに軽微な昇圧と頻脈のストレス性自律神経反応を起こさせ、その反応には視床下部・DMH、PeF、中脳PAG、MRとRVLなどが関与している可能性が示された。そこで、視床下部・DMH、PeFと中脳PAG間のニューロンネットワークを明らかにするために、中脳へのトレーサー投与を行なう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本学川越キャンパス内に新設した動物飼養施設の設置ならびに外部委員を含めた本学実験動物委員会の査察等の遅れのため、同施設の運用開始が11月となった。その後、動物取り扱いのための教育研修と別研究資金で購入したラットで研究室スタッフの訓練を行なったため、本申請実験開始が3月にずれ込んだ。そこで、前述のように今年度遂行予定であった社会的敗北ストレスの研究を来年度に先送りし、比較的簡単にストレス条件の設定ができるケージ交換による住環境ストレスに変更して実験を行なった。全ての手法や設備の準備は整ったので、今後は遅れを取り戻すよう実験を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
既述のように、動物飼養施設の問題から、昨年度末には実験の達成度に遅れが生じているが、今年度は動物飼養施設も順調に稼働し始め、昨年度訓練したスタッフも実験手技に熟達し、今年度はこれまでの遅れを取り戻す予定である。今年度は、昨年度遂行予定であった社会的敗北ストレスの実験と、昨年度末から実施し始めた住環境ストレスの実験を同時進行で行なう予定である。 昨年度末の住環境ストレスの結果は予想よりマイルドな刺激の可能性があったためか、ストレス性の血圧や心拍数の上昇が小さく、また興奮性マーカーであるc-fosタンパクの脳内発現も対象と比し大きくなかった。ストレスとしては比較的マイルドなもので、この条件におけるストレス反応の脳内ネットワークの解明には意義があると考えるが、刺激がマイルド過ぎて住環境ストレスを引き起こす脳内部位の特定が難しい可能性がある。そこで、さらに同種他個体のケージ交換ストレス実験を継続するとともに、本ストレス刺激より強い住環境ストレスとなりうるキツネ尿を用いた住環境ストレスを試す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学川越キャンパス内に新設した動物飼養施設の設置ならびに外部委員を含めた本学実験動物委員会の査察等の遅れのため、同施設の運用開始が11月となった。その後、本年度5月から開始予定であった動物取り扱いのための教育研修と研究室スタッフの訓練を行なったため、本申請実験開始が3月にずれ込んだ。そこで、今年度の助成金で購入予定であった備品や動物をはじめ薬品・物品などの消耗品の購入を行うことができなかった。そのために今年度使用できなかった当該助成金を次年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。 本年度末にまでに、動物飼養施設も順調に稼働し始め、実験手法や設備の準備はほぼ整ったので、次年度は、昨年度遂行予定であった社会的敗北ストレスの実験と、昨年度末から実施し始めた住環境ストレスの実験を同時進行で行なう予定である。次年度終了までには、当初計画の通りに実験を遂行するとともに、学会発表を含め成果発表の遅れも取り戻したいと考えている。 次年度には社会的敗北ストレスと住環境ストレスの実験を同時進行で行なうため、今年度購入できなかった血圧・心拍数計測用テレメトリープローブ2個(受信解析装置とプローブ2個を既に所有している)と免疫組織染色用シェーカーを1台、および脳内マイクロインジェクション用のマニュピレータ1台の備品を6月までに購入予定である。また、薬品や動物などの消耗品は適宜使用状況に応じて、使用する計画である。
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