2014 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞のサイズ制御の機構とその破綻による病態の解析
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25430064
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | mTOR / 蛋白合成 / 脂質合成 / 細胞サイズ / 限局性皮質形成異常 / FCD |
Outline of Annual Research Achievements |
実績の概要を研究計画のサブテーマごとに記載する。 1. mTORシグナルのON/OFF刺激: mTORシグナルは神経可塑性に不可欠であるが、一方で過剰な活性化は腫瘍や皮質形成異常(4で詳述)を引き起こす。そのため引き続き神経細胞におけるmTORシグナルの活性化及び活性抑制物質を探索し、いくつかの候補分子を見い出した。なかでも摂食関連ペプチドがAMPKの活性化を介して神経細胞のmTOR活性を著低下させることを見いだした。摂食と脳に置けるmTOR活性はリンクしており(研究発表の1参照)、更なる解析により重要な知見が得られると考えている。 2. mTORによる神経細胞のサイズ変化: 免疫染色による定量で、mTORの活性化型変異体の遺伝子導入した神経細胞では、サイズの増大が見られた(統計的有意差有り)。現在パッチクランプ法による膜電気容量の計測を行っている。 3. 蛋白合成及び脂質合成の必要性: mTORの活性化型変異体の遺伝子導入した神経細胞で、蛋白合成及び脂質合成が亢進していることを、アイソトープを用いた実験によって明らかにした。細胞のサイズ増大には双方の亢進が必要(一方を阻害しただけでサイズ増大が見られなくなる)であることを示している。 4. 疾患脳におけるmTORシグナル: 今年度最も進んだサブテーマである。総説(研究発表2)で予測した通り、限局性皮質形成異常(focal cortical dysplasia)の手術サンプルと血液サンプルの次世代シークエンサーでの解析(共同研究)から、患者脳組織からmTORの新たな体細胞変異を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H26年度の研究は当初の計画以上に進展している。 特に「脳疾患におけるmTORシグナル」に関して、目覚ましい進展があった。mTOR上流のシグナル分子TSCの変異が原因の結節性硬化症と病理所見の良く似た疾患である限局性皮質形成異常において、mTORの4種類の新規体細胞変異を見いだした。これは多施設共同研究の賜物である。4種のmTOR変異プラスミドをトランスフェクションして調べたところ、これらは全て活性化型変異であることが明らかになった。またin vitro kinase assayからhyperactive変異であることも確認された。患者脳では実際にmTOR下流のS6キナーゼのリン酸化も亢進しており、mTORC1経路の異常な活性化が限局性皮質形成異常の原因であることを示すことが出来た。この結果は現在投稿中(revise)である。 その他のサブテーマについては概要に記した通り、順調に研究が進展している。 最終年度に向けてデータのとりまとめも行っている。 26年度は英文総説3報を発表し、上記論文を含め原著3報を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
mTORシグナルのON/OFF刺激に関しては同様の実験を行う。摂食関連ペプチドのmTOR経路への作用が認められたので、BDNFとの相互作用に着いても検討する。これらペプチドの細胞サイズへの関与については報告がないので、免疫染色や電気生理学的計測によってサイズ測定を行う。 酵母スクリーニングによる活性化型mTOR変異体を用いた実験では、蛋白合成、脂質合成を亢進させ、細胞サイズの増大に貢献している、という基礎データを得ているが、今回、ヒトの疾患で見いだされた変異体に関しても同様の実験を行うことで、より病態生理的な意義を付加することができると考えている。
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Causes of Carryover |
謝金等を使用しなかったため、次年度に持ち越し分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画が3年間を通して行うものがあるため、物品費(消耗品)に使用予定。
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Research Products
(5 results)