2014 Fiscal Year Research-status Report
家族性筋萎縮性側索硬化症タイプ6におけるRNA代謝異常の分子基盤
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25430080
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo Women's University |
Principal Investigator |
藤井 律子 広島文教女子大学, 人間科学部, 教授 (90342716)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | FUS/TLS / RNA輸送 / RNA代謝 / D-セリン / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、TLSノックアウトマウス由来の神経初代培養ならびに脊髄運動ニューロンモデル細胞株NSC-34を用いて、酸化ストレス、高濃度KCl、グルタミン酸/NMDAR阻害剤存在下において誘導される神経変性初期のRNA輸送系の変化やTLSのチロシンリン酸化について検討した。さらに、TLSの機能欠損によるNMDARの活性化異常の有無を調べる目的で、TLSノックアウトにおけるD-セリン生成量について検討した。 (1)神経変性誘導に伴うTLSのチロシンリン酸化の意義 昨年度の実験結果より、RNA輸送に係るTLSとTLS結合パートナーの会合体形成にTLS分子内の特異的リン酸化が関与することが推測された。本年度は、TLSのC末端RNA結合領域近傍に存在するチロシンリン酸化コンセンサス配列に着目しつつ検討した結果、脊髄運動ニューロンが受ける持続的過興奮によりチロシンリン酸化が誘導されており、さらにこの部位のリン酸化がTLSの核内輸送に必要であることを示唆するデータを得た。このことから、運動ニューロンにおいてはTLSが過興奮を調節し神経変性を抑止するためのRNA発現制御に関与していることが予想される。 (2)TLSの機能欠損によるD-セリン生成量の変化とその意義 TLSの機能的欠損マウスでは、正常マウスよりも脳脊髄内のD-セリン含量とL-セリンをD-セリンに変換する酵素ーセリンラセマーゼの発現量が恒常的に高いことが明らかとなった。D-セリンはチャネル型NMDARの活性制御に関わることから、TLSの機能欠損は、グルタミン毒性に対して極めて過敏な状態を生み出しており、神経変性を誘導する一因になりうるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度計画では、点変異体TLSマウス生体試料や脊髄運動ニューロンの初代培養細胞を用いて、RNAスププライシングバリアントの解析と網羅的なオミックス解析を予定していたが、研究協力機関におけるトランスジェニックマウスの作製が大幅に遅れている。このことに加え、昨年8月の広島市土砂災害では、本学も浸水被害ならびに間欠的な長時間に亘る停電に見舞われた。研究代表者の研究室においても、すでに調整済であった冷凍保管試料や抗体・酵素類などの高価試薬を損失し、実験研究の進捗に甚大な支障が出た。特に検証実験に遅れが生じており、有意な研究データを得るまでに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
点変異体TLSノックインマウスの解析が大幅に遅れているため、研究最終年度では、脊髄運動ニューロンのモデルとなる細胞株や初代神経培養を用いて、神経変性初期におけるRNA代謝異常のシグナルを同定していくことに傾注したい。TLSの機能に関連するexosome解析にも着手しており、RNA/RNA断片を含む脊髄運動ニューロン特異的なexosomeのプロファイリングを進める方針である。
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Research Products
(3 results)