2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン修飾によるインプリンティング遺伝子制御の解析と周産期致死疾患モデルの開発
Project/Area Number |
25430085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
成瀬 智恵 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (30372486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 雅秀 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (50251450)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒストン脱メチル化 / エピジェネティクス / マウス / 発生 / 神経 |
Research Abstract |
我々が作製したヒストン脱メチル化酵素変異マウス胚ではホメオティック変異が引き起こされて周産期に死亡することがわかっていたので、25年度はホメオティク変異の原因がヒストン修飾の異常によるものなのか、この酵素の持つ他の機能によるものなのかを明らかにするために、発生期に発現低下の認められたHox遺伝子座のヒストン修飾を詳細に解析した。野生型と遺伝子変異胚を比較した結果、ヒストンメチル化修飾の量に有意に差が認められたので、変異胚におけるホメオティック変異はヒストン修飾の異常が原因であることが強く示唆された。さらに、ヒストン修飾の異常によることをより明確に示すために、脱メチル化酵素活性を失活させる点突然変異を導入したマウスを作製しているところである。ファミリー分子についても機能を比較するために変異マウスを作製中である。 また、HP1の神経組織特異的変異マウスを作製しテストバッテリー方式による行動解析を行ったところ、野生型と比較してオープンフィールドテストなどで有意に差が認められた。神経組織におけるHP1の発現を調べたところ、野生型では主に神経細胞に発現しているが、神経組織特異的変異マウスでは発現がほぼ消失していることを確認した。免疫染色と定量的RT-PCR両方法を用いて脳組織におけるヒストン修飾や神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、幼弱ニューロンなどのマーカーの発現を調べた結果、コントロールと神経組織特異的変異マウスの間に明白な差は認められなかった。しかしながら、神経伝達物質受容体の一部の発現量は、定量的RT-PCRによる解析で差が認められたため、現在タンパク質レベルでの解析および神経伝達物質の定量を進めているところである。ヒストン脱メチル化酵素についても、HP1と同様に神経組織特異的変異マウスを作製し、テストバッテリー方式による行動解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒストン脱メチル化酵素変異マウスのホメオティック変異の解析については、単純変異マウスを用いてできる分子メカニズムの解析はほぼ終了することができた。現在酵素活性を失活したマウスについては作製中であるが、ファミリー分子の単純変異マウスはほぼ作製に成功した状況である。周産期の死因にもつながると考えられる神経系の解析については、神経組織特異的遺伝子変異マウスを作製し、計画通りに変異が起きていることが確認できた。また、HP1変異マウスに関しては、組織学的、免疫組織学的解析およびテストバッテリー方式による行動実験を概ね終了することができ、神経伝達物質に関連した異常があるのではないかと予想される結果を得ることができた。さらに、その結果と矛盾しない神経伝達物質受容体の遺伝子発現低下が観察されたので、HP1と標的となる神経伝達物質の関係が示唆された。以上の結果を得られたことからおおむね順調に進展していると考えられる。 HP1変異マウスの胚におけるインプリンティング遺伝子発現の異常に関しては、成長因子の遺伝子発現が減少しているかもしれないと予想していたが予想どおりの結果が得られなかった。しかしながら、ヒストン脱メチル化酵素遺伝子変異マウスの胎盤におけるインプリンティング遺伝子の解析に関しては、胎盤においては脱メチル化酵素が特定のインプリンティング遺伝子領域の立体構造を制御していることが示唆されたので論文投稿準備中である。よって、インプリンティング遺伝子の解析という観点からおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
脱メチル化酵素活性点突然変異マウスおよびファミリー分子変異マウスが作製できたら、脱メチル化酵素単純変異マウスとの骨格、遺伝子発現の比較を行い、脱メチル化酵素単純変異マウスで観察されたホメオティック変異の責任領域を明確にする。また、これまでホメオティック変異にはファミリー分子の方が重要であるという報告が多数あるので、ファミリー分子との機能分担について、相互作用する分子の相違や発現時期、発現領域の相違などを調べることで明らかにしていく。 HP1神経組織特異的変異マウスに関しては、神経伝達物質に関連した異常があるのではないかと予想される結果を得たので、まず、HP1神経組織特異的変異マウスにおいて異常があると考えられる神経伝達物質、受容体、代謝酵素などの脳内含有量をHPLCまたはウェスタンブロッティングなどにより定量し、コントロールと比較する。さらに、神経伝達物質受容体のアゴニストや再取り込み阻害剤などを投与する薬理学試験を行い、行動異常が改善するかどうかを確認する。予想された神経伝達物質経路が異常であることが強く示唆されたら、HP1がどのようにこの経路の制御に関与するのかを明らかにするため、まず、この経路に関する遺伝子のヒストン修飾状態を調べる。さらに、関係する脳領域を用いて網羅的に遺伝子発現解析を行い、大きく変化している遺伝子があればそれらのヒストン修飾状態も調べる。そのときHP1と相互作用している因子についても調べる。これら成獣の解析から明らかになる分子メカニズムが周産期の代謝や呼吸に関係している可能性があるので、同様の解析をHP1単純変異マウスを使用して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノックアウト動物を作製するためのマウスとして単価の安い系統であるICRを使用することで、ノックアウト動物作製費用が削減されたため。また、クロマチン免疫沈降に使用するキットや抗体を、製造会社のキャンペーンなどに合わせて購入することで安価に入手することができたため。さらに、実験の手技を洗練させることで、試薬や物品の使用量を最小限度にして実験を進めることができたため、物品費が大きく削減された。 昨年度国際学会に参加しなかったので、今年度は論文を投稿すると共に国際学会に参加することで、今年度使用しなかった旅費や謝金を使用する。また、自分で実験を行うことが困難な、HPLCを用いた低分子神経伝達物質の測定や次世代シークエンサーを用いたChIP-seq解析を外注する経費に用いる。
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Research Products
(5 results)