2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25430102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
築山 忠維 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20399819)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Wnt / RNF43 / Fzd / Dvl / ubiquitin / がん / 細胞極性 |
Research Abstract |
Wntは局所的なシグナル伝達に機能する細胞外分泌型糖タンパク質で、現在までに19種類のWntが古典的・非古典的Wntの2つのサブファミリーを形成している。これらのWntの多くは、初期発生、形態形成、出生後の個体恒常性の維持などに重要な役割を担っていることが知られている。特に古典的Wntシグナルの異常活性化と発がんの密接な関係は古くから知られており、その一例として家族性大腸がんにおけるβcateninの分解異常は、古くから研究されてきた。RNF43はさまざまなWnt受容体(ほとんどのFzと、共役受容体のLRPなど)の発現調節に関わることが報告されているが、RNF43がどのようにしてWnt受容体群を幅広く認識しているのかは、全く解明されていなかった。そこで我々は、まずWnt受容体であるFzdをRNF43がどのように認識しているのか、また古典的・非古典的Wntシグナルの両方の下流でエフェクターとして機能するDvlとの結合様式を免疫沈降法を用いて解明すると共に、これらの結合がWntシグナルを調節する上でどのような意味を持っているかを、培養細胞やカエル胚を用いた機能検討を行って来た。 その結果、RNF43はその細胞外ドメイン(PAドメイン)でFzdのCRDと結合する事でFzd の分解を介したWntシグナルの調節を行っている事、またその細胞内ドメインにおいてDvlと結合して非古典的Wntシグナルの調節を行っているが、RNF43-Dvlの結合は古典的Wntシグナルの調節には関与していないこと、がんで同定されたRNF43の変異によりWntシグナルの恒常性維持機構が大きく崩れていることなどが明らかとなった。現在は、これらの得られた知見をまとめ、発表を行っているところである(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画は 1.RNF43とDvl2、Fzd5との結合様式の解明、2.RNF43の機能に必至な結合分子の同定、を予定していた。 まず1.についての成果は、RNF43とFzdがそれぞれの細胞外ドメインを介して結合していることを明らかにした。この結合様式の解明は、Fzdと同じくCRDタンパク質の一つであるRspo1が、RNF43-Fzdの結合を解除しRNF43依存性のFzdの分解をキャンセルするメカニズムの理解を理解する上で大きく役立つものである。また、RNF43-Dvl2間の結合についても、RNF43の細胞内ドメインに結合していることは確認出来ていたが、詳細な結合部位までは同定できていなかった。そこで多数の欠失変異体を用いた免疫沈降実験を行い、その結合部位を10アミノ酸程度まで絞り込むことが出来た。また、RNF43-Dvlの結合と古典的Wntシグナル調節の間に相関関係は無いことを明らかにし、報告中である。また2.についても、以前我々はRNF43自体に結合するタンパク質の候補を4種類同定していた。そこで免疫沈降実験を行った結果、これらの中の1つは非特異的結合であったものの、3つのタンパク質はRNF43の細胞内ドメインに特異的に結合する分子であることが確認出来た。現在はそれぞれの結合の持つ生物学的意義について検証を行っている。 これら1.と2.から得られた結果を合わせて考えると、当初予定していた平成25年度分の研究計画は充分達成できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、平成26年度以降の研究内容は 3.ノックアウトマウス作製による、RNF43の形態形成における機能の解析、4.RNF43結合分子がFzd発現に与える影響の解明、5.がんにおけるRNF43遺伝子変異による機能変化の解明、6.RNF43の構造解析、7.p53経路との接点の解析を予定していた。 しかし他のグループよりすでにRNF43ノックアウトマウスについての報告がなされたため、ノックアウトマウスを用いて行う予定であった3.と7.の項目については、現在予定を変更してRNF43の細胞外ドメインの機能解析を行う(現在進行中)。その他の4.と6.の項目については、予定通りに推進する予定であり、また現在準備段階から実行段階へと進行中である。具体的には、RNF43-Dvl2、RNF43-Fzdの結合部位が二次元構造上は詳細に決定出来たため、それぞれの結合について結晶構造解析を行うことで、RNF43のWntシグナル調節機構をより詳細に理解することができると考え、リコンビナントタンパク質の作製を行っている。 さらに、5.については、既に現在投稿中の論文内で報告を行っているところである。
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