2014 Fiscal Year Research-status Report
病因性mDNA変異を有するがん細胞による寄生性代謝の解析とその制御
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25430110
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
竹永 啓三 島根大学, 医学部, 准教授 (80260256)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 病因性変異 / グルコース代謝 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肺がんや大腸がんにおいてミトコンドリアDNA(mtDNA)の病因性変異が高頻度に認められる。病因性mtDNA変異はエネルギー(ATP)産生の低下を来すが、がん細胞は旺盛に増殖・転移する。我々は、病因性mtDNA保有がん細胞が活性酸素種(ROS)を多量に産生することから、寄生性がん代謝(ROSに暴露された間質細胞が産生する高エネルギー代謝産物のがん細胞への供給によるATP産生)の亢進あるいは相互作用によって、転移するためのエネルギーを得ているのではないかと推測している。マウス肺がん由来で病因性mtDNA(13891InsC)を保有するP29mtB82M細胞は、野生型mtDNAを保有するP29mtP29細胞と比較して、in vitroでのATP産生が低いにもかかわらず、in vivoでは高転移性を示す。P29mtB82M細胞は、P29mtP29細胞と比較して、グルコーストランスポーターの一つであるGlut3および乳酸トランスポーターの一つであるMCT4を高発現しており、解糖系酵素であるHK1、PFK1、PGK1、PKM1の発現も高いことが判った。また、単独培養よりも間質細胞との共培養下でグルコース(蛍光性2-deoxyglucose誘導体である2-NDBG)の取込みが若干亢進されることを明らかにした。さらに、低酸素下でのグルコースの取込みを検討したところ、P29mtP29細胞と比較して、P29mtB82M細胞で顕著な取込みの亢進が認められた。一方、遊離脂肪酸(蛍光性TF2-C12)の取込みを検討したが有意差は認められなかった。これらの結果から、P29mtB82M細胞と間質細胞との相互作用および低酸素環境におけるグルコースの取込みと解糖系の亢進がP29mtB82M細胞のATP産生にとって重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
間質細胞と病因性mtDNA(13891InsC)を保有する肺がん細胞との共培養系においてグルコース代謝の変化が観察されること、低酸素下でのグルコースの取込みに差が認められること、遊離脂肪酸の取込みには変化が認められないこと等が明らかになった。しかし、がん細胞中でのATP濃度をATeamを用いてリアルタイムに可視化するFRET解析のための予備的な実験によるデータ収集を行なったが、満足のいく結果が得られなかったため、研究計画はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、グルコース代謝に焦点を絞った研究を行なう。また、間質細胞として、がん関連線維芽細胞(CAFs)を用いた実験系を使用して実験を行なう予定である。さらに、がん細胞中でのATP濃度をATeamを用いて測定する。
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Causes of Carryover |
来年度への移行期にも円滑に研究が進められるように考慮し、研究費の使用額を計画的に調整したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画に基づき、消耗品費、論文校閲費に充当する。
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Research Products
(8 results)