2013 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達と転写制御を結ぶ白血病原因遺伝子TRIB1の解析
Project/Area Number |
25430121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
横山 隆志 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 研究員 (00535833)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 白血病 / Trib1 / C/EBPα / Bcl11a / 転写因子 / レトロウィルス挿入変異 / ノックアウトマウス / MAPキナーゼ経路 |
Research Abstract |
Trib1の導入によって誘導されたマウスAML37症例中9症例において,レトロウイルスによるタギングから共通挿入部位からBcl11a遺伝子を同定した.マウス骨髄移植実験の結果 Bcl11a単独の強発現ではAMLを誘導しなかったが,Trib1/Bcl11aを同時に発現させるとTrib1単独よりも迅速にAML発症を誘導し,Bcl11aもHoxa9/Meis1同様にTrib1との協調を示した.Bcl11aはzinc finger型転写抑制因子で,プレB細胞の分化に必須であるが,ヒトCLLにおいてt(2,14)転座による活性化やnon-Hodgkin lymphomaにおける増幅が報告されている.しかしながらAMLにおける報告は少ないため,本研究ではTrib1によって誘導されるAMLを用いて新たなBcl11aの機能が解明できることが考えられた. 次に野生型およびBcl11a KOマウスの14.5日胎児肝由来造血細胞に対しレトロウイルスによりTrib1を導入して不死化細胞を樹立した.各細胞株を4株ずつ用いてマイクロアレイによる発現解析を行い, t検定によりp値0.05以下,1.5倍以上発現に差のある遺伝子をピックアップした.Bcl11a KOマウス由来の細胞では 野生型と比較してmonocyte分化過程で機能するCSFやCSF1Rの発現が高く,このことは Trib1/Hoxa9/Meis1によって誘導されたマウスAMLと比較してTrib1/Bcl11a AMLの方がより未分化な形態を示す結果と一致した. さらにGene Set Enrichment Analysisを行いBcl11aによって発現の変動する遺伝子セットの探索を行った結果,Bcl11a KOのグループにおいて造血細胞のcell lineageやCML,Smad/TGFβ,PI3K/Akt,Notchシグナルに関連する遺伝子セットのenrichmentが見られた. Bcl11a KOのグループにおいてHEY2やHDAC, TLE, MycといったNotchシグナルのターゲット遺伝子の発現が低かったが,AML発症においてはNotchシグナルが抑制的に機能することが報告されていることから,Bcl11aがNotchシグナルを抑制することでAMLをより悪性化させている可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は研究計画調書に記載していない「Trib1によって誘導されるAMLを用いたBcl11aによる白血病関連遺伝子制御の解析」を中心に行った.私達はこれまでにTrib1の協調遺伝子としてBcl11aを同定し,マイクロアレイ解析からHoxa9/Meis1によって誘導されるAMLとの比較を行った.しかしながら得られた解析結果が不十分であり,これらに加えて野生型とBcl11a KOマウスの胎児肝由来造血細胞からTrib1導入によって誘導された不死化細胞を用いた解析が必要であることが考えられた. Bcl11aは転写抑制因子であるため,Trib1による白血病発症におけるBcl11aの機能を解明することは本研究計画調書のテーマである「白血病発症におけるTrib1のシグナル伝達と転写制御を結ぶ機能」に相応しいと考え,平成25年度はBcl11aの研究を優先させた. このため研究計画調書に記載した研究について,ChIP seqについては不死化細胞株の樹立とFLAG抗体によるChIPの予備実験,条件検討にとどまっているが,平成26年度はこれらの材料と結果を基に計画調書に記載したHoxa9およびC/EBPαのChIP seqによる結合部位の同定を行う予定である.またTrib1コンディショナルKOマウスの骨髄細胞からFLT3-ITDにより不死化させたIL-3非依存的に増殖する細胞株を作製しており,この細胞を用いてTrib1コンディショナルKOによる影響について調べることができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
Bcl11aによる白血病関連遺伝子制御の解析においては,正常マウス骨髄初代培養細胞にTrib1とTrib1/Bcl11a導入した不死化細胞も作製しており,両細胞を用いたマイクロアレイ解析からBcl11aにより発現変動する遺伝子を調べる.この結果と平成25年度実施の解析結果とを統合し,Bcl11aがTrib1によって誘導されるAMLにおいてどのように機能するかを明らかにする. Trib1によるMEK1/ERKシグナル亢進の白血病における意義の検討するために,これまでにTrib1コンディショナルKOマウスの骨髄細胞にFLT3-ITD を導入し,樹立した不死化細胞株がサイトカイン非依存的に増殖することを確かめている.この細胞株において4-Hydroxytamoxifen (4-OHT)を添加してTrib1 をKO し,ERK1/2 のリン酸化状態への影響とサイトカイン非依存性が失われる可能性について検討する.またサイトカインの存在下においても,Trib1 KO による白血病細胞の増殖抑制効果やアポトーシス,分化誘導について調べる. Trib1導入による変化に着目したHoxa9およびC/EBPαのDNA 結合部位の網羅的解析を行うため,正常マウス骨髄細胞にFLAG-Hoxa9/Trib1 または FLAG-Hoxa9 を単独で導入した細胞株と,Trib1 KOマウスの骨髄細胞にFLAG-Hoxa9 を導入した細胞株をそれぞれ作製した.これらの細胞において抗FLAG 抗体でHoxa9のChIPを行い,qPCRにてHoxa9のターゲットであるCdk6およびCd33への結合を確認した.平成26年度は次世代シーケンサーを用いてHoxa9 のゲノム内の結合部位を解析し, Trib1 の有無によって違いが見られるか調べる.さらに内在性C/EBPαについても同様にChIP シークエンスを行い,Hoxa9 のDNA 結合領域と比較する.
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Research Products
(3 results)