2014 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞のオートファジーと低酸素応答制御による免疫的細胞傷害抵抗性の克服
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25430150
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
原嶋 奈々江 島根大学, 医学部, 助教 (60345311)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / 免疫 / 低酸素 / アポトーシス / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)は、活性化NK細胞やT細胞に発現し、癌細胞選択的にアポトーシスを誘導する分子である。Recombinant TRAILやTRAIL受容体である death receptors (DRs) に対する agonistic抗体は新規抗癌薬として期待されているが、抵抗性を生じやすく、欧米の臨床試験での治療効果は未だ不十分であり、治療効果を高める工夫が求められている。癌治療において癌細胞に対する薬剤抵抗性の獲得の機序には、低酸素という微小環境、癌幹細胞の存在、免疫抑制性細胞の増殖などの関与やオートファジーとの関連が注目されている。申請者は、癌細胞死と拮抗的に作用するオートファジーの抑制により抗癌効果が増強されることを既に明らかにした(Cancer Immunol Immunother. 2012, Breast Cancer Res Treat. 2012)。オートファジー阻害効果を有するpifithrin-muとTRAILを併用したところ、ヒト膵癌細胞に対するTRAILの抗腫瘍効果を増強することが明らかとなった(Monma H, et al. Mol Cancer Ther, 2013)。また、癌細胞は低酸素環境に反応・順応することにより、浸潤・転移能を高め、治療抵抗性を獲得することが知られている。膵癌細胞株を低酸素環境下で培養するとTRAIL感受性が正常酸素下よりも低下した。低酸素誘導因子HIF-2alphaをRNA干渉で抑制すると、Panc-1細胞のTRAIL感受性が高まった。HIF-2alphaがTRAIL抵抗性に重要な役割を果たしており、癌の低酸素反応を阻害することにより、TRAILによる治療効果を高め得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRAIL感受性の異なる膵癌細胞株を低酸素環境下で培養すると、正常酸素環境下で培養した場合と比較してTRAILに対する感受性が低下することがわかった。TRAIL低感受性であるヒト膵癌細胞株Panc-1のHIF-1alphaとHIF-2aplhaをsiRNAでそれぞれtransientにknockdown (KD) すると、HIF-2alphaをKDした場合にPanc-1細胞のTRAIL感受性が高まることがわかった。Apoptosis Protein Array assayによりコントロール及びHIF-1alphaのsiRNAによるRNA干渉細胞よりもHIF-2alphaをKDしたPanc-1細胞において、survivin発現が減少することが新たに明らかとなった。さらにHIF-2alphaをKDしたPanc-1細胞にsurvivinを過剰発現させると、TRAIL抵抗性が復活することが確認できた。これらの研究成果は、日本がん免疫学会、日本癌学会、日本免疫学会等で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
癌微小環境における低酸素は、アポトーシスの回避や治療抵抗性に関わっていると考えられており、これらを標的とした治療が検討されているが、具体的にHIF-2aplha分子との関連性については報告がほとんどないので、詳細に検証したい。健常人末梢血から誘導したgamma-delta T細胞はヒト膵臓癌細胞を傷害し、ブロッキング抗体を用いた細胞傷害実験で抗DR4抗体ではなく抗DR5抗体によってその細胞傷害性が抑制されることが本年度検証できた。低酸素環境やオートファジー制御が癌細胞死に与える影響について、パーフォリン・グランザイム系、TRAIL/DR系での細胞傷害の検討を癌反応性gamma-delta T細胞やCTLを用いて引き続き検討する。 マラリアの治療薬や関節リウマチやSLEなどに対する免疫抑制薬として臨床で使用されているchloroquine(CQ)は、欧米ではすでに悪性腫瘍に対して臨床試験が実施されている。オートファジーを阻害する働きも報告されているCQとTRAILを併用することによるヒト膵癌細胞に対する抗癌効果を検討したところ、CQの併用は、それぞれ単剤の場合と比較し有意に両細胞株の細胞増殖率が低下し、アポトーシスも促進した。さらに、CQとTRAILの併用は両細胞株のコロニー形成能も抑制した。CQは、TRAILに限らず、他の抗悪性腫瘍薬や放射線療法など既存の様々な抗癌治療法の効果を増強する可能性が示唆されたので、引き続きその機序の解明と臨床への応用方法を検討したい。
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Causes of Carryover |
H26年度3月時点で、購入希望の蛋白発現検出用抗体やアポトーシス検出試薬のメーカー国内在庫がなく納期に時間がかかり、また当時の残金では購入できず、3月末までに購入することが難しかったため、繰越して使用する研究費が生じてしまった。科学研究費補助金の一部基金化により、年度をまたぐ物品調達が可能となったので、次年度に交付される学術研究助成基金助成金と合わせて、本研究遂行に必要な試薬を購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究最終年度となるH27年度は、シグナル伝達経路阻害剤やその解析に必要な抗体、siRNA、分子生物学実験用試薬、細胞培養用液体培地、培養用血清、サイトカインなどを中心とした細胞培養関連試薬およびプラスチック実験器具類等の消耗品購入に、交付される研究費の7~8割を充てる予定である。その他は、研究成果を所属学会(国内)で発表するための旅費、研究成果を英文科学雑誌に投稿するための英文校正費や論文投稿料などに使用する予定にしている。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] Bcl-2 family inhibitors effectively sensitize human pancreatic cancer cells to TRAIL2014
Author(s)
Hari Y, Harashima N, Kidani A, Hayashi H, Kawabata Y, Harada M, Yano S, Tajima Y
Organizer
45th Anniversary Meeting of APA (American pancreatic association) /JPS(日本膵臓学会)
Place of Presentation
Hapuna Beach Prince Hotel, Big Island, Hawaii, U.S.A.
Year and Date
2014-11-05 – 2014-11-08
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