2014 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境における芳香族炭化水素受容体AhRの意義解明と治療標的としての評価
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25430158
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塚本 信夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20407117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫抑制 / AhR / IDO / Kynurenine |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにIDOによるTrp代謝物であるKynurenine(Kyn)ががん細胞内での芳香族炭化水素受容体AhRの内在性リガンドの一つであることが明らかになってきた。AhRのがん微小環境での役割を解明するため、マウスの様々ながん細胞株にIDOあるいは恒常的活性化型AhR(actAhR)を過剰発現させ、同系マウスに移植したところ、がん組織でのCD8 T細胞におけるCD3発現低下、骨髄由来抑制細胞MDSCとマクロファージの増加が見られた。IDOによる免疫抑制の機構として、1) Trp枯渇による免疫細胞の機能抑制、2) がん細胞からのKynによる抑制性免疫細胞の誘導、3) がん細胞内のAhRが誘導する因子による抑制性免疫細胞の誘導が考えられたが、IDOとactAhRで同様の免疫抑制を誘導していることから、がん細胞内のAhR活性化で誘導される遺伝子産物が抑制性免疫細胞の誘導に重要であることが示唆された。マウス大腸がん細胞のIDO/actAhR過剰発現株の網羅的遺伝子発現解析から、これらの細胞で発現が亢進し免疫抑制に関わる可能性のある遺伝子を複数同定し、それらを過剰発現したがん細胞を同系マウスに移植した結果、ある遺伝子においてIDO/actAhRと同様の免疫抑制が見られるとともに、actAhRによるin vivoでの腫瘍増殖亢進が、その遺伝子ノックダウンにより顕著に低下したことから、この遺伝子はAhRの下流で免疫抑制を担うことが示唆された。また樹状細胞のIDOはTrp代謝酵素としての機能の他に、ITIMを介したシグナル伝達を担うことが報告されたが、我々はリン酸化ITIMに対する抗体を作成しヒトがん組織の免疫染色を行った結果、がん細胞でもIDOのITIMリン酸化が認められた。さらにヒトがん組織でのIDO ITIMリン酸化と同じ部位で発現亢進が認められるがん悪性因子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん細胞におけるIDO-AhR経路の活性化の免疫抑制への関与について、担がんマウスでの解析から、どのような免疫細胞の変化が起こり、それがどのような分子機構によるのか明らかになりつつある。がん種によるAhRの作用の差異、IDO機能でのTrp代謝とITIMシグナルの関係も次第に明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス大腸癌で同定できた活性化AhRの下流で免疫抑制を担う遺伝子について大腸がん患者の病理組織切片での免疫染色を進め、AhR活性化との関係を明らかにするとともに臨床病理学的因子との相関解析を進める。ヒトがん組織でのIDO ITIMリン酸化と同じ部位で発現亢進が認められるがん悪性因子について、発現亢進にIDOのTrp代謝とITIMシグナルがどのように関与するか明らかにし、免疫抑制に関与する可能性を検討する。また、がん種によるAhRの作用の差異についてAhR複合体の差異から説明できるかについて解析を進める。Kyn以外のAhRリガンドの探索についてもライブラリー構築とスクリーニングを行う。さらに、IDO陽性の癌細胞を移植したマウスでAhR阻害剤を投与して治療効果を評価する。
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Research Products
(4 results)