2013 Fiscal Year Research-status Report
染色体構造とゲノム配列の統合にもとづく新規エピゲノム解析法の開発
Project/Area Number |
25430168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡邊 良久 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00362187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA複製タイミング / 染色体バンド境界 / ヒトゲノム / 疾患遺伝子 |
Research Abstract |
光学顕微鏡で観察される染色体バンド構造とゲノム配列の統合的解析ならびにその臨床応用をめざして、特にDNA複製タイミングを指標に、ヒト染色体の構造的クロマチン境界と考えられるR/G-バンド境界領域に着目した疾患エピゲノム解析を行った。 DNA複製タイミングの測定方法については、対数増殖期のヒト培養細胞を60分間BrdUで標識した後、セルソーターを用いてDNA含量に基づいて、S期内を4分割する。次に、免疫沈降法によりBrdUで標識した新生鎖DNAの精製をおこなった後、測定する部位のプライマーセットを用いて、定量的PCRをおこない、ゲル電気泳動後に各S期分画のバンドを定量する。また、近年公開されたDNA複製タイミングデータベースを活用した。 DNA複製タイミングの実験ならびにデータベースを用いた解析を組み合わせた解析結果から、ヒト染色体のR-バンドとG-バンドの境界(R/G-バンド境界)に対応するゲノム領域を、DNA複製タイミングのS期前半から後半への転換部位として塩基配列レベルでゲノム網羅的に特定できた。特定したR/G-バンド境界領域の詳細なゲノム解析を行った結果、がん関連遺伝子群や特徴的な脳神経疾患遺伝子群が集中して局在しており、200 kb以上のサイズの大きな遺伝子群が多いことが判明した。R/G-バンド境界領域内に特定したサイズの大きな遺伝子群について、種々の細胞系列間で詳細なDNA複製タイミングの比較解析を行った結果、細胞間で複製タイミングの転換パターンに違いがあることがわかった。また、転写と複製タイミングの方向性における相関解析を行った結果、細胞ごとにその関係が異なっていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのDNA複製タイミングの実験解析とデータベースを用いた解析を組み合わせたゲノム網羅的な研究を行った結果、染色体バンド境界領域に局在するがん関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群の一般的な構造的特徴を明らかにすることができた。また、種々の細胞系列間で詳細にバンド境界領域に局在する遺伝子群のDNA複製タイミングを比較解析した結果、細胞間での違いを詳細に明らかにすることができた。 これまでの解析から、染色体バンド境界領域は、局在する遺伝子の本来の機能と密接に関連した“ハイリスク・ハイリターン”ともいうべき特徴を備えている染色体機能領域であることが示唆された。染色体バンド境界領域のような特殊なゲノム部位は、今後、疾患エピゲノム解析を行っていく上で、有効な指標になりうる染色体機能領域であることが実証され、当初の計画をおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における今後の推進方策については、本年度行った解析法の有効性を検証できたことから、DNA複製タイミングを指標にした実験解析とデータベースによる解析を組み合わせた網羅的な研究手法を用いて、さらに研究を発展させていく計画である。 具体的には、昨年度にゲノム網羅的に特定した染色体バンド境界部位について、特に特徴的な疾患遺伝子群が局在していたゲノム部位に焦点を当てて、詳細な細胞系列間での比較解析を行っていく。また、脳神経疾患や癌などの発症メカニズムとの関連で、癌や脳神経疾患と関連した細胞系を用いた比較解析を押し進め、詳細なエピゲノム解析ならびに機能解析を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
近年、ヒト含む様々な生物種由来細胞系について、DNA複製タイミングに関するデータベースが整備・公開されたため、本研究を遂行していくうえで、これらの情報を有効に活用することができた。その結果、ヒトゲノム全域を対象としたDNA複製タイミングの解析を実験による方法とデータベース情報を駆使した方法を組み合わせることにより、効率的に進めることができたので、次年度使用額が生じた。 ヒト由来の各種細胞系列間で、ゲノム全域を対象としたDNA複製タイミングの体系的な比較解析をさらに進めていくために、使用する計画である。具体的には、染色体バンド境界部位に特定した疾患関連遺伝子群に着目した詳細なエピゲノム解析を行っていく予定である。また、がんや脳神経疾患と関連した細胞系を用いた比較解析を押し進めていくために、使用する計画である。
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Research Products
(4 results)