2015 Fiscal Year Research-status Report
染色体構造とゲノム配列の統合にもとづく新規エピゲノム解析法の開発
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25430168
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡邊 良久 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00362187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 真人 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20190291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 染色体バンド境界 / DNA複製タイミング / 神経可塑性 / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体構造とゲノム配列の統合を目指した研究から、ヒト染色体の構造的クロマチン境界と考えられる“染色体バンド境界領域”の特殊な構造環境は、脳神経疾患発症の分子機構と密接に関連することを明らかにした。また、バンド境界領域の特殊な機能構造は、神経シナプス機能と関連した神経可塑性の分子基盤にも関与することが示唆された。これまでの申請者らのグループによる解析結果から、神経シナプス機能や脳神経疾患と関連した遺伝子群は、ゲノム上にランダムに局在しているのではなく、ある特定のゲノム領域に局在していると推測される。 具体的には、バンド境界に対応する複製タイミングの転換領域には、グルタミン酸レセプター遺伝子群をはじめとする神経シナプス機能と関連した遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群が集中して存在するとの興味深い知見を得た。例えば、バンド境界領域内に、神経シナプス伝達において重要な役割を果たしているAMPAレセプター遺伝子群、てんかん症と関係したグルタミン酸レセプター遺伝子GRIK1、ならびに家族性アルツハイマー病の代表的な原因遺伝子であるAPPなどを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
染色体構造とゲノム配列の統合を目指して、DNA複製タイミングを指標した染色体バンド境界を軸とするヒト染色体バンド構造についての一連の医学的な研究成果から、ヒト染色体の“バンド境界領域”の特殊な構造と機能を詳細に解析し、バンド境界領域は、神経シナプス機能や神経可塑性の遺伝学的な分子基盤と密接に関連していることを実証することができた。また、“バンド境界領域”は、脳神経疾患遺伝子群でしばしば検出されるトリプレットリピート伸長などのゲノム不安定性部位に対応し、 “ハイリスク・ハイリターン”ともいうべき特徴を備えている重要な染色体機能領域であることを実証できた。以上のように、本研究課題で提示した仮説に関連した新規の知見を明らかにできたことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
神経シナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群に着目した細胞系列間での“染色体バンド境界地図”の比較解析を体系的に行っていく予定である。また、ゲノム網羅的に特定したバンド境界部位のエピゲノム解析を進めて、その一般的な構造や機能の特徴などを明らかにしていく予定である。さらに、染色体バンド境界領域におけるゲノム不安定部位としての特性とトリプレットリピート病との関連解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
現在一般に公開されているゲノム・エピゲノム関連のデータベース情報を効率的に活用して実験結果と組み合わせることにより、本研究課題を効率的に進めることができたことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
極端に長い神経シナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群に着目した細胞系列間での“染色体バンド境界地図”の比較解析を行っていく予定である。また、神経関連遺伝子群が局在した染色体バンド境界領域における構造特性とトリプレットリピート病との関連解析を進めていく予定である。 最終的に、一連の研究成果を関連学会での口頭発表を行うとともに、学術論文として発表する予定である。
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Research Products
(2 results)