2013 Fiscal Year Research-status Report
発生工学的手法を用いた特別天然記念物「オナガドリ」の保全
Project/Area Number |
25430192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前田 照夫 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (50144895)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オナガドリ / 黄斑プリマスロック / 精子 / 凍結保存 |
Research Abstract |
本研究では,6か月間にわたり,オナガドリ精液の性状検査を行い,年齢や季節による変化や,個体ごとの特性について検討した。さらに,精液の質が高い個体からの精液を凍結保存し,人工授精を行うことで,受精卵を得ることを試みた。 精液性状検査の結果,全ての検査項目において,月による値の増減はあるものの,日照時間,気温など季節による変化との関連は見られなかった。従って,オナガドリの精液の質については,季節による変動は少ないものと考えられた。年齢との関連について,若い個体で,奇形率が低く,精子密度および運動性が高い傾向がみられ,若い個体の方が精液の質は高いことが確認された。 受精試験において,受精卵が得られたのは,横斑プリマスロック(黄斑)精子で,凍結保護剤にメチルアセトアマイド(MA)を用いた区(半量,全量の両方)のみであり,オナガドリでは受精卵を得ることはできなかった。グリセロール区で受精卵が得られず,MA区でのみ受精卵が得られたことより,凍結保護剤としてMAはグリセロールより有効であることが本実験で確認された。また,横斑で受精卵が得られ,オナガドリで得られなかった理由について考察すると,オナガドリおよび横斑の精子の奇形率・運動性では,両者に有意差は認められなかったのに対し,精子密度では,オナガドリが横斑よりも,有意に低い値であった。さらに,オナガドリと横斑の凍結融解後の奇形率,運動性を比較すると,両者に有意差は認められなかったことから,オナガドリと横斑で,受精の有無を分けた要因は,精子数であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の研究成果において,オナガドリの精液性状の特徴が明確にされ,凍結保存した精液で受精卵を得る可能性が示唆された。つまり,凍結保存したオナガドリ精液を用いて受精卵を得るためには,精液の質が高い,若い個体の精液を使用すること,また,凍結融解精子の濃縮程度をさらに高め人工授精を実施することが必要であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
オナガドリの凍結保存精子で受精卵が得られた成功例はまだない。今後は,若い個体の精液を使用し,凍結融解後の精子の濃縮の程度をさらに高めた後,人工授精を実施することで受精卵を得ることができると確信している。 また,凍結用希釈液の改良(凍結保護剤や希釈液の化学組成の検討)を進め,より高い受精率が得られる凍結方法の検討を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は116,073円残額が生じた。その理由は,年度末(1月~3月)に購入予定であった物品費(消耗品)が予定より減額となったため,116,073円残額が生じた。 この残額116,073円については,物品費(消耗品)の購入を予定している。
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