2014 Fiscal Year Research-status Report
寄主植物シフトにおける遺伝子の発現・系統および相互作用生物の効果
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25430194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 みどり 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20294910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 康介 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00192170)
佐伯 順子 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 学術研究員 (40646858)
山田 直隆 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20304769)
中平 賢吾 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70596585)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA-seq / 寄主植物利用 / 遺伝子発現 / 植食性昆虫 / 共生菌 / 寄生蜂 |
Outline of Annual Research Achievements |
狭食性の植食性昆虫2種について寄主シフト(寄主範囲拡大)実験を行い、そのうち種Hについて次世代シーケンサーによる網羅的RNA-seqにより遺伝子発現状態の違いを供試植物間で比較できた。元来寄主とは遠縁のダイズを寄主として供試したとき、近縁植物の供試時より体重増加が小さく、より多くの遺伝子の発現が大幅に増加した。発現が増加したのは防御や変態に関する遺伝子だった。これは、広食性昆虫の場合に少数の遺伝子の発現が小幅に増加するにとどまる様子および発現遺伝子の種類(Celorio-Mancera et al. 2013)が質的に異なっていた。 細胞内共生菌に感染する植食性昆虫種Cについては、テトラサイクリンによりこの共生菌を除去した系統を作製した。除去系統(非感染系統)ではダイズへの寄主シフト時に孵化卵数が減少したが、非除去系統(感染系統)では減少しなかった。よって、細胞内共生菌が宿主昆虫の寄主植物範囲の拡大に寄与していることが判明した。 一方、寄生蜂存在下では、被寄生後の種Cの成虫羽化数は、非除去系統の方が少なく体サイズも小さかった。反対に羽化した寄生蜂は、非除去系統で飼育した両親の子の方が大きく発育も早かった。よって、寄生蜂による被寄生環境では、細胞内共生菌による植食性宿主昆虫へのコストがあると言える。 これらの結果から、狭食性昆虫の寄主シフト時には大幅で多面的なコストがかかり、広食性昆虫の寄主シフトと質的に異なること、細胞内共生菌が宿主昆虫の寄主シフト時に利益をもたらす半面、寄生蜂による寄生のコストを増大させること、が解明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーによる網羅的RNA-seqを担当する分担者を加えたことで、植食性昆虫1種について、RNA-seqを行うことができ、計画通り、昆虫の遺伝子発現状態の供試植物間での違いを検出できた。
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Strategy for Future Research Activity |
種Cについても同様の寄主シフト(寄主範囲拡大)実験とRNA-seqを行い、発現する遺伝子と発現量を測定し、供試植物間で比較する。 当初計画していた種Aの寄主シフトが実験室環境下で起こりにくいことがわかり、今後、様々な地理集団について実験する予定だが、同様に寄主シフトが困難で十分な反復数が取れない場合は中止する可能性がある。代わりに計画になかった種Hで実験が先行しているため、計画通り、計2種での実験は達成できる見込みである。 また、当初の計画にはなかったが、植食性昆虫が感染する細胞内共生菌がこの昆虫を利用する寄生蜂の生活史形質に影響することが判明したので、今後はさらに寄生蜂寄生時の双方の昆虫における遺伝子発現への寄主昆虫内共生菌の影響をRNA-seqによって解明する。
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Research Products
(17 results)