2014 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ群体上で繁茂するシアノバクテリア等の成長維持機構の解明
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25430197
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 秀之 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80341676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サンゴ / 病気 / シアノバクテリア / 細菌 / 珪藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,サンゴ礁崩壊の過度的現象として,藻類や細菌類(シアノバクテリアを含む)がサンゴ類へ波状的に攻撃しつつある現象を記載し,また実験的に再現・検証を行い,最終的にサンゴ礁の保全に繋げることを目的としている.平成26年度に実施した研究実績の概要は次の通りである. ①沖縄県座間味村阿嘉島沖のアミメヒラヤギ(八放サンゴAnnella reticulata)群体上で繁茂し,群体を死亡させる糸状シアノバクテリアを分子同定により特定し(Moorea bouillonii),その付着機構および繁茂を促進する要因を解明し論文を発表した.②同じくシアノバクテリアが主原因となるサンゴの病気のブラックバンド病(BBD)については,罹患率や罹患速度に関する研究結果について現在論文を執筆中.なお,BBDの分布については,清浄な海域と考えられる鹿児島県沖永良部島,慶良間諸島の渡嘉敷島および伊江島近くの離礁でも確認した.③冬期の低水温の際の干潮時に,コモンサンゴ類やハマサンゴ類の群体が白化しその上に珪藻が付着してサンゴ組織の回復を妨害していることも確認した.オウギケイソウLicmophora, Climacosphenia他の付着珪藻が主であった.④これらの細菌あるいは被覆生物によるサンゴへの影響の調査中に,宮崎県で悪性のサンゴの病気様の連絡があったため,急遽現地調査を行った.罹患速度等の情報からこれは悪性の感染症のホワイトシンドロームであることを特定した.罹患したサンゴはAcropora japonicaおよびA. solitaryensisの優占2種であったが,他方の優占種Turbinaria peltataには現在のところ罹患が見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌等によるサンゴ組織への侵入はサンゴの感染症を引き起こし,サンゴの病気は国内外を問わずこの10年で急速に拡大している.更に温暖化を始めとする環境変化は細菌類を始めとした生物が引き起日和見感染を助長し,サンゴおよびサンゴ礁の維持に大きな障害となりつつある.シアノバクテリアによる感染症あるいは付着珪藻等によるサンゴ被覆についての記載や機構の解明が本研究の目的である.珪藻特に付着性珪藻は周年確認され,冬期の低水温時に浅場のサンゴの群体表面に付着しサンゴ組織の回復を妨害する現象は毎年繰り返されていることを確認した.これらサンゴ上に定着する微少な表在生物は,サンゴ幼生の加入を始め,少なからず影響を及ぼしていることが考えられるため,現在バイオフィルムとしての視点から解析を行っており,陸域からの汚濁の影響がある海域では糖の組成に影響を及ぼすことを確認した.バイオフィルムの脂肪酸組成や色素組成についても測定を開始した.一方のシアノバクテリアを中心とする細菌の集合体が引き起こすブラックバンド病については,細菌組成の解明には至っていないものの,温度や光が重要な促進要因であることが判明しその動態についての解明に繋がっている.なお,細菌組成については,平成27年度に次世代シーケンサ-を用いた解析により実施する計画である.他方,平成26年度の途中,宮崎県で大量発症したホワイトシンドロームに関しては,共同調査を実施した宮崎大学他との共著で短報を投稿中である.熱帯や亜熱帯のサンゴの病気の蔓延が温帯域にも拡大していることが明らかとなった研究成果となる.以上の結果から,多少の研究内容の変更はあったものの,研究結果は確実に蓄積され,概ね目的は達成されている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はサンゴの病気に関するミニ国際シンポジウムを主催し(於琉球大学),招聘したオーストラリア,フランス,台湾の研究者とのネットワークを構築した.またマリンバイオ共同推進機構JAMBIOの国際シンポジウム(つくば大との共催)にハワイ大のサンゴの病気の専門家を招聘し,その後研究の連携を行っている.平成27年度はこれらの海外研究者との国際共同研究に発展させ,国内におけるシアノバクテリア等が原因となるサンゴの病気の解明を共同あるいは分担して進める予定である.特に次世代シーケンサーを利用してのメタゲノム解析を含めた共同研究を準備中である.なお,平成26年度の途中,宮崎県においてサンゴの感染症が拡大し,急遽現地調査を行った結果,悪性の感染症(ホワイトシンドローム)であることが判明した.当初予定にはなかったものの類似の研究であり緊急性も高いため,これについても同様の手法でメタゲノム解析が実施することを計画中であり,国内における細菌等による感染症研究の発展に繋がることが期待される.平成27年度は最終年度にあたるため,これまでに得られた結果を基に,サンゴの感染症や被覆死に関与するシアノバクテリア,細菌,付着珪藻等についてとりまとめ,論文執筆を行う計画である.また,ブラックバンド病については,発症後の進行にどのような環境要因が促進あるいは抑制するのかについて,実験的に条件を変えて実施する予定である.
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Causes of Carryover |
年度末の消耗品購入の際に見積額と納品額に僅かな差があったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に充当する.
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Research Products
(8 results)