2014 Fiscal Year Research-status Report
ポリADPリボシル化酵素PARPによる熱ショック因子HSF1の転写制御機構
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25440010
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤本 充章 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80359900)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HSF1 / PARP / 転写 / ポリADPリボシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が高温に曝されると、プロテオスタシス容量の調整を担っている熱ショック蛋白質等の発現が誘導される。この応答は熱ショック応答と呼ばれ、熱ショック因子(HSF)によって転写制御されている。しかしながら、熱ショックによるHSF1の活性化やクロマチン構造の調製などの一連の転写調節機構については未解明な部分が多い。今回、新たにHSF1結合蛋白質としてポリADPリボシル化酵素(PARP)を同定し、その機能解析を行った。 高等動物ではPARPは17種類も存在し、ヒストンや転写因子をポリADPリボシル化して転写制御を行っている。新たに、HSF1が、PARP1およびPARP13と複合体を形成すること、ストレスを受けていない細胞内でそれらをHSP70プロモーターへ引き寄せることを見いだした。熱ストレスにより、プロモーターへ結合するHSF1は顕著に増加する。一方、PARP1とPARP13はHSF1と解離し、PARP1のみが下流のHSP70遺伝子領域へと移動した。あらかじめPARP1をプロモーター上に留めることができない条件下では、熱ストレスを与えてもPARP1はHSP70遺伝子領域へ引き寄せられなかった。また、PARP1とPARP13の解離はポリADPリボシル化で制御されており、この修飾が熱ストレス後のHSP70遺伝子領域への移動とそのクロマチン構造の弛緩に必要であった。さらに、非ストレス条件下での三者複合体の存在は、HSP70プロモーターのヒストンH2Aバリアント量を一定に保つために必要であった。以上の結果は、HSF1があらかじめPARPとの相互作用を介してHSP70プロモーターのクロマチンの構成要素を調節することで、ストレス時の急速なクロマチン構造変化と転写誘導を可能にしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究計画の通りに研究が遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの報告で、HSF1やポリADPリボシル化修復に携わるPARP群はがんの発生などに関与する。HSF1はノックダウンで乳がん細胞(MCF-7)やヒトメラノーマ細胞(HMV-1, MeWo)の細胞増殖が低下することが知られている。今後は、HSF1-PARP複合体が癌の形成にどのように関わっているかを明らかにしていく。 方法としては、MCF-7, HMV-1及びHeLa細胞をHSF1のノックダウンを行い、野生型HSF1あるいはHSF1-PARP相互作用を断ち切るHSF1点変異体を導入し、細胞増殖を増殖曲線で調べる。また、HSF1欠損マウス線維芽細胞に野生型HSF1や上記のHSF1変異体を導入し、RAS によるトランスフォーメション能の違いを調べる。さらに、同様の方法で処理したMCF-7あるいはHMV-1細胞をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍の形成変化をサイズや組織染色(H&E染色、増殖マーカーのPCNA染色など)で調べる。
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Research Products
(5 results)