2013 Fiscal Year Research-status Report
1つの細胞が持つ新奇なウイルス防御システムの体系的理解
Project/Area Number |
25440013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
新海 暁男 独立行政法人理化学研究所, 横山構造生物学研究室, 先任研究員 (10391989)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | CRISPR-Casシステム / 獲得免疫 / 超分子複合体 / 電子顕微鏡構造 / タンパク質 / 低分子RNA / リボヌクレアーゼ / Thermus thermophilus |
Research Abstract |
多くの細菌が持つCRISPR-Casシステムは、細菌に感染するウイルス由来のDNAやRNA、或いは細菌に侵入するプラスミドに対する獲得免疫システムであり、それらの外来DNA或いはRNAを分解して除去する。本システムの作用機構を解明することは獲得免疫システムの原型やその進化を考察するために重要である。本研究は、ゲノムが比較的小さいにも関わらず、Type I、-III-A、-III-Bの3つのCRISPR-Casシステムを持つ高度好熱菌Thermus thermophilus株をモデル生物とし、1つの細胞における本システムを体系的に理解することを目的としている。今年度は、Type III-A、-III-Bシステムを構成しているCmr複合体及びCsm複合体の構造・機能解析を行った。 Cmr複合体は、1分子のCmr1、1分子のCmr2、1分子のCmr3、4分子のCmr4、3分子のCmr5、1分子のCmr6、及び、34~55塩基の1分子のCRISPR RNA(crRNA)から構成されていることが明らかになった。電子顕微鏡を用いた構造解析の結果、Cmr複合体は桿状構造をしており、中央部には4分子のCmr4と3分子のCmr5がらせん状に位置していた。Cmr複合体は crRNAとの相補的な配列を含む1本鎖RNAを6塩基間隔で5箇所切断した。各Cmr4分子の間隔はRNAの6~7塩基に相当する長さなので、RNA分解の活性中心はCmr4にあると推察できた。一方、大腸菌のCRISPR-Casシステムを構成し、外来DNAの分解に関与している超分子複合体;CascadeもCmrと同様のらせん構造をしていることから、Cmr複合体とCascade複合体は同じ起源から派生した分子であると推察できた。 T. thermophilus株のCsm複合体はCsm1~5の5種類のタンパク質とcrRNAから構成されていることが分かった。Csm複合体は細菌に侵入したDNAの分解に関与していることが他の研究グループによって明らかにされているが、今回調製したCsm複合体は単独で核酸分解活性を示さなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Cmr複合体の活性中心の同定、及び、クライオ電顕による構造解析が完了しておらず、本複合体の作用メカニズムの詳細を明らかにするまでには至っていないため。さらに、Csm複合体の活性の同定に難航しており、本複合体の機能を明らかにするまでには至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
Cmr複合体に関しては、複合体の構成要素であるcrRNAの結合部位をクロスリンク-マススペクトル法で同定し、その結果を基にして活性中心を推定・同定する。さらに、クライオ電顕による構造解析に加え、新たにX線結晶構造解析を行うための試料調製・結晶化を試みる。Csm複合体に関しては、電子顕微鏡構造の解析、及び、サブユニット構成比の解析を行う。一方、Csm複合体がDNA分解活性を持つためにはCsm複合体と相互作用する未同定因子が必要である可能性が考えられるので、その他のCasタンパク質や金属イオンにその可能性があるか否かを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年10月に播磨事業所から横浜事業所への異動を命じられ、2~3ヶ月の間、その準備で研究が滞り、当初予定していた各種変異Cmrタンパク質の作製、及び、海外の協力研究者へのサンプル送付などの作業を行うことができなかったため、変異タンパク質の作製を協力研究者に委ねたこと、論文の掲載料を海外の協力研究者が負担したことが前年度に残額が生じた主な原因として考えられる。 次年度は、前年度の研究を継続すると共に、前年度未使用額を、当初予定していなかった、セルフリータンパク質合成システムを用いたX線結晶構造解析を行うための試料の調製・結晶化実験、及び、Csm複合体に相互作用する因子の探索実験の費用に充当することを計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Structure and activity of the RNA-targeting Type III-B CRISPR-Cas complex of Thermus thermophilus2013
Author(s)
Raymond H.J. Staals, Yoshihiro Agari, Saori Maki-Yonekura, Yifan Zhu, David W. Taylor, Esther van Duijn, Arjan Barendregt, Marnix Vlot, Jasper J. Koehorst, Keiko Sakamoto, Akiko Masuda, Naoshi Dohmae, Peter J. Schaap, Jennifer A. Doudna, Albert J.R. Heck, Koji Yonekura, John van der Oost, Akeo Shinkai
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 52
Pages: 135-145
DOI
Peer Reviewed
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