2014 Fiscal Year Research-status Report
X線結晶解析によるブルーム症候群BLMヘリカーゼのがん抑制機構解明
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25440024
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
北野 健 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40346309)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質 / DNA / ヘリカーゼ / X線構造解析 / ブルーム症候群 / ホリデイジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
ブルーム症候群は,10 代にして様々な悪性腫瘍を頻発する高発がん性の病気(常染色体劣性の遺伝病)である。二本鎖 DNA を一本にほどく(巻き戻す)ヘリカーゼの一種,BLM(Bloom syndrome protein)が変異によって機能欠損してしまうことで引き起こされる。本研究では,BLM タンパク質の立体構造解析を進めて,その優れたヘリカーゼ活性の仕組みに迫ることを目的としている。 今年度はまず,BLM ヘリカーゼの,ホリデイジャンクション(ゲノム損傷の修復中間体である十字型 DNA 構造)への結合様式を調べるために,複合体モデル構造の構築作業を行った。ここでは,昨年度に決定した BLM RQC(RecQ C-terminal)ドメインのX線構造データと変異体実験の結果(Kim et al, 2013, Sci. Rep. ; PDB IDs:3WE2 and 3WE3)が役立った。作成したモデル構造を用いて解析を進めた結果,BLM ヘリカーゼによるホリデイジャンクション解きほぐし反応と,DNA の認識機構について,新たな知見を得ることができた。これらの研究成果をまとめた論文を作成して,国際科学ジャーナルに発表することができた(Kitano, 2014, Front. Genet.)。また同研究成果に関して,国内学会誌での論文発表(北野, 2014, 日本結晶学会誌)と,学会シンポジウムでの講演発表(北野, 2014, 第87回 日本生化学会大会)も行った。 また,環状ペプチド誘導体による三量体Gタンパク質の阻害機構に関して,他のタンパク質立体構造と比較することによって導き出された新たな知見を,国内学会誌に発表した(北野, 2014, 生物物理)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定になかった作業(BLM ヘリカーゼとホリデイジャンクションの複合体モデル構造の構築)を,急遽おこなう必要性が生じた。さらに,同構造情報に基づいて,ホリデイジャンクション分岐点の移動反応を,コンピュータを用いて調べる必要性が生じた。これらの解析作業と,発表論文の作成執筆を優先させたことで,予定していた研究に遅延が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に決定した BLM RQC ドメインの立体構造,および本年度に構築した BLM ヘリカーゼの複合体モデル構造を活用して,同タンパク質が,ホリデイジャンクションなど入り組んだ形状の DNA を解きほぐす仕組みの解析を進める。引き続き,新しい立体構造情報の取得を目指して,BLM ヘリカーゼ(および WRN ヘリカーゼ)の結晶化実験を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,BLM タンパク質の研究の進捗状況に合わせて,予算執行計画を変更したことに伴うものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後,未使用額の研究費は,タンパク質と DNA のX線結晶解析に必要な,消耗品器具の購入,試薬の購入,放射光施設スプリング8への国内旅費,学会で研究成果を発表するための国内および海外旅費,そして科学雑誌で研究成果を論文発表するための出版料などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)